海の底から見えたのは
▶GG絶望軸 最初に聞こえてきたのはとある少年の唄声だった。 その声は深く、深く、海の底まで澄み渡り泡と共に消えていく。そんな泡達を見上げながら唄から誕生した彼は知った。 この海は、この唄は、誰の視界にも映ってはいないのだと。 まるで悲願するように唄う少年を海の生き物と共に見つめていると、少年はこちらへ気付き驚きからくしゃりと悲しげに表情を崩した。"ごめんなさい"と何度も謝罪する姿はとても小さくその声さえも泡と共に消えていく。 消えていく泡と共に生まれたばかりのこの意識が遠のいていく。 少年は…"おれたち"を唄で紡ぎ出した事を後悔していた。 深く。深く。 「………、?」 先程まで視界いっぱいに広がっていた海の景色が消えた。辺りを見渡すが見知らぬ森の中に取り残され困惑の表情を浮かべる少年、シャフは背に巻いた大きなリボン型の帯がそよ風で横髪と共に僅かに揺れるのを感じながら少し前の記憶を辿り始める。 シャフはシャフの唄声から誕生し、海の底にある屋敷で孤独と過ごしていた。本来人間であったシャフは奇跡の歌声を持つ事から数多くの者が求め、最終的に力を搾り取ら
8月6日
no title
ガラル地方。自然と文明が折り重なった島。 しかし、モダンな風貌の建造物と石造りの古風な街並みが広がるその地方には、あまり知られていない闇の世界が存在した。 ガラル地方で暮らす善良な民とポケモンは、暗く狭い路地に足を踏み入れることは滅多にしない。それは彼らの中で暗黙の了解であり、犯してはならぬ禁忌であったからだ。 (んー……雨の匂い。ジメジメとして、独特な……だけど……) ガブリアスのクラージュには、世界各国を旅して回った経験により鍛えられた"直感"というものがあった。こうした"直感"というのは根拠はなくとも案外信じられるもので…例えば嵐の予感や近くにテロ組織がいる予感。長旅において危険と出会うことは避けられないが、それらを事前に察知することは安全で健全な旅のために最も重要な術と言っても良いだろう。 だからこそ、クラージュは雨の匂いの中に嗅ぎとった《《違和感》》にも機敏に反応していた。 (この臭い……なーんか嫌な予感) ワイルドエリアを超えれば人々の気配が広がる街に入る。一見、野生のポケモンがうじゃうじゃと住み着く外より安全に見える街内。...
7月12日
no title
「……彼らには申し訳ないことを……、……いいえ。こんなことを言うべきではありませんね。自分の死が他者に後悔を植え付けさせる展開なんて、フロウも望んでいないでしょうから」 ロビーのソファに腰をかけていたグロリアは、同族の青年を案内し帰ってきたリグにそう問いかけた。 「はい。あ、そう考えるとやっぱりツヴァイさんとフロウさんって相性良かったんですね。彼女の性格なら、数日後には立ち直ってますよ」 「…そうね、彼女はきっとそう。だけども………………貴方の同族の彼は?どうなの」 「えーフェイクさんですか?私あんまりその話したくないんですけどー…」 リグは尻尾を指先に絡めながら、頬杖を着く。 「さっきちょっと聞いちゃったんですよね。ツヴァイさんに攻め寄ってましたよ。ラブルさん達が止めてくれてたんで放って来ましたけど」 「………はー………でしょうね。そうよね…そうなるわよね………、……………いいですか、リグ。私たちは、あの子を殺してしまった以上、せめてもの償いとして彼女を守り抜く義務があります」 「はい、ザシアンさん」 「とはいえ……」 悪いのが誰かと問われれば
7月12日
置き去りになった夢
「フロウが死んだ?」 その声色は今まで聞いてきた中で最も無機質なものだった。ソウルディからの面倒な仕事を終えいつものようにエオス事務所の施設に向かい適当な選手を捕まえて遊ぼうと思っていた時。 彼フェイクの前に姿を現したのは普段の余裕そうな立ち振る舞いよりかは僅かに静まったリグと、酷く窶れた状態で涙を零し俯くプクの肩を寄せ眉を顰めるオウジだった。 「ドッキリ?俺に?」 「いいえ、本当ですよ。貴方がそんな顔をするなんて珍しい事もあるもんですね。…まあ、無理もないですが」 対応や表情はいつもと変わらないフェイクだが、彼の僅かな動揺を見逃さないのは同じインテレオンだからだろうか。 同族だからこそフェイクは悟った。嘘ではないと。何より救助隊の中でも比較的平和主義で嘘を付くことに慣れていないであろうプクの元気が無い。 「…今何処にいるんだ?」 「この先の診療室で皆別れを告げています」 「そう。遺体はあるんだ」 「ちゃんと回収しましたよ。彼には知り合いが多いですから」 あくまで変わらない声色に涼し気な表情で答えるとそのまま迷いなく廊下を歩きリグ達の横を通り抜け
7月12日
no title
勝負の勝ち負けなんて、どちらが先に倒れるかの違いだ。勝ったからといって無事とは限らない。お互いに致命傷を負っているのであれば、先に命が尽きた方が負けなのだから。 だから、フロウがそこに駆けつけた時、漂う鉄の匂いに嫌な予感がひしひしとしていた。 「─────、おい」 インテリ、と出かかった声は途切れた。 フロウの視界に、一面の赤と壁にもたれ掛かる彼の姿が映ったからだった。 「…………フロウ、さん………げほっ、……」 彼の口からごぼり、と塊にすら見える量の赤が垂れ落ちる。フロウは周囲に転がる死骸に見向きもせず、ブーツが血に塗れることも気にせず駆け寄った。 腹の真ん中に穴を開けた彼は、そんなフロウの様子を見て力無く笑った。 「やっぱり……来て、くれる…んですね……」 「……チッ……………もういい、オマエは喋るな」 精々ここで出来ることといえば応急処置くらいだ。出血量は多いが、たたりめを使った移動手段で運び込めば何とか間に合うかもしれない。何度も極地に立たされた経験のあるフロウは至って冷静だった。 この目の前の問題を、如何に確実に解決出来るか。今この状況
7月12日
リグフロ告白まで
📝リグ視点 ♢幼少期 ・フロウくんと出会う →なにこの変ないきもの!あっごはんたべた!泣いた!なんでなんでなんで?俺が怪我したからですか?優しいいきもの?俺のために泣いてくれるなんて優しいですね、お前は。 ・フロウくん失踪 →いきものいなくなっちゃった😢 ♦再開(inエオス) ・フロウくんを初めて見た時 →あれ?なんか見た事ある?……もしやあの時のいきもの…生きてたんですね……えっなんか救助隊とかしてる?あの時確かに予兆はありましたけど…えぇ……まじかぁ……?まぁ貴方がひとりぼっちじゃないならいいですけどね。 ・フロウくんが記憶思い出した(ことに気づいた) →やっぱ覚えてるなこの人…まぁいいんですけどね。私も覚えてるし。いちばん気まずいんですよねこういう時が…。私がファウストなのもバレてるでしょうし、警戒されたら面倒ですよね… ・過去を克服したフロウくんが視線をこっちに向けてきた →どう、して…………(絶命) ・フロウくんと距離が縮まった →えーやっぱり良くないですよ、私ギャングなのに…こんな悪い子をフロウさんは救い出そうとしてるんですか?い
7月12日
no title
「やかましい虫だと思うかって?まさか」 リグは嗤った。 別になんと言われようが構わない。何故なら、彼の反応はごく一般的なものであるからだ。兄なら弟を守れ、家族をぞんざいに扱うな。よくいる、ごく普通の家庭であれば、当たり前の倫理として守られるはずの掟。 「おかしいのは我々の方なんですよ」 出る杭は打たれ、叩きのめされる。これは社会の縮図だ。普通じゃない環境で育った子供は当たり前を知らず、道徳も倫理も理解出来ず、周囲からは"異端”のレッテルを貼られて省かれる。 リグは他の子供より賢かったので、自分の育った環境が決して普通では無いことを理解していた。 それによって生じた不都合や自分の中の「おかしさ」にも気づいていた。子供というのは小さければ小さいほど、周囲に守られ死の危険から遠ざけられる。しかし、リグの場合は違った。小さければ小さいほど無力で無知。早く成長して、力をつけなければ死ぬのだから、成長するしか無かった。 リグとレグの間に壁が出来たとしたら、それは恐らく認識の違いだ。レグにとってのリグは単なる双子の兄かもしれない。でも、リグにとってのレグは"普
7月12日






