no title
- 7月12日
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「やかましい虫だと思うかって?まさか」
リグは嗤った。
別になんと言われようが構わない。何故なら、彼の反応はごく一般的なものであるからだ。兄なら弟を守れ、家族をぞんざいに扱うな。よくいる、ごく普通の家庭であれば、当たり前の倫理として守られるはずの掟。
「おかしいのは我々の方なんですよ」
出る杭は打たれ、叩きのめされる。これは社会の縮図だ。普通じゃない環境で育った子供は当たり前を知らず、道徳も倫理も理解出来ず、周囲からは"異端”のレッテルを貼られて省かれる。
リグは他の子供より賢かったので、自分の育った環境が決して普通では無いことを理解していた。
それによって生じた不都合や自分の中の「おかしさ」にも気づいていた。子供というのは小さければ小さいほど、周囲に守られ死の危険から遠ざけられる。しかし、リグの場合は違った。小さければ小さいほど無力で無知。早く成長して、力をつけなければ死ぬのだから、成長するしか無かった。
リグとレグの間に壁が出来たとしたら、それは恐らく認識の違いだ。レグにとってのリグは単なる双子の兄かもしれない。でも、リグにとってのレグは"普通”の象徴だった。自分よりも数分後に生まれただけの、生きている年月はほとんど変わらない存在。自分とは違い、血で血を洗うことも知らなければ死の恐怖すら知らぬ、純粋無垢でありながら正しい存在。
だから、恐ろしくて近寄ることが出来ないのだ。 リグにとってそれは未知であり、リグの知っている力では証明出来ない何かを彼は持っているから。
きっと近寄れば、レグはリグを兄だと呼び慕うだ ろう。しかし、彼は現実を知らない。
彼の周りの世界が、リグによって作られたものだ なんて、知るはずがない。
彼の働くカフェが、生 きる平和な世界が、リグの手によって操作され…………否。
そもそも彼の生きてきた過去も、そして未来も、リグの手によって作られた「普通の平和な世界」 であることなんて、知るわけがないので。
それを知ってしまった日には、彼は何を思うのだろうか。
これは、未熟な両親と無知で幼いリグが犯した罪 なのだ。でも、それを背負わなければいけないの はリグだけだ。
何故なら、両親は死んだから。
死人に口なし、死人に背も無し。
行き先のない恨みを指先の弾に乗せて、今日も悪魔を殺すのだ。
