no title
- 7月12日
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勝負の勝ち負けなんて、どちらが先に倒れるかの違いだ。勝ったからといって無事とは限らない。お互いに致命傷を負っているのであれば、先に命が尽きた方が負けなのだから。
だから、フロウがそこに駆けつけた時、漂う鉄の匂いに嫌な予感がひしひしとしていた。
「─────、おい」
インテリ、と出かかった声は途切れた。
フロウの視界に、一面の赤と壁にもたれ掛かる彼の姿が映ったからだった。
「…………フロウ、さん………げほっ、……」
彼の口からごぼり、と塊にすら見える量の赤が垂れ落ちる。フロウは周囲に転がる死骸に見向きもせず、ブーツが血に塗れることも気にせず駆け寄った。
腹の真ん中に穴を開けた彼は、そんなフロウの様子を見て力無く笑った。
「やっぱり……来て、くれる…んですね……」
「……チッ……………もういい、オマエは喋るな」
精々ここで出来ることといえば応急処置くらいだ。出血量は多いが、たたりめを使った移動手段で運び込めば何とか間に合うかもしれない。何度も極地に立たされた経験のあるフロウは至って冷静だった。
この目の前の問題を、如何に確実に解決出来るか。今この状況で最も重要なのは、それだった。
しかし、傷を塞ごうと手を伸ばしたフロウの手をリグは力無く抑えた。
怪訝な顔をするフロウに、ゆっくりと首を振る。
「………いらないです。体の調子で、何となくわかりますから」
「オマエ………イジワルズのリーダーであるこのオレの前で、良くもまぁそんな戯言を吐けたモンだな?…………巫山戯るなよ?」
「………だって、そのストール…」
曇った眼差しは、フロウが止血に使おうと手に取ったストールを指していた。フロウの所持品で止血に使えそうなものは、あいにくこのストールしか無かった。
彼の言わんとしていることは、フロウも直ぐに理解した。これはツヴァイから誕生日プレゼントとして受け取ったスカーフだった。
「…………ケッ、あのお人好しがんなこと気にすると思うか?むしろ自分が渡したモンが友人の命を救ったって知りゃあ…飛び跳ねて喜ぶだろうな」
「……ちがう、ちがうんです……そんな大事なものを使って貰う必要は、ないです………自分のことは自分がいちばんよくわかります」
「……もう黙ってろ、オマエは黙ってされるがままに」
「いいです、もう。だから…フロウさん」
─────これだけは教えてくれませんか?
リグは殆ど力の入っていない手で、スカーフを掴むフロウの指に触れた。
「私はフロウさんのことが好きです、フロウさんは…私のこと…すき、ですか…?」
「はぁ?今はそんなこと」
「フロウさん」
お願いです、答えてください。
指に触れていた腕が、ズルりと床に落ちる。
縋り付くように問われれば、その問いをフロウは拒否をすることが出来なかった。言ってしまえば彼は諦めるかもしれないという懸念より、もしもの可能性を考慮して、言わなかったことで後悔なんてしたくなかったから。
「……チッ、言ってやるから勝手にくたばろうとすんじゃねぇよ」
──────愛してるよ、リグ。死にそうだからって理由で、こんな柄でも無いこと言ってやるくらいには。
そう言えば、リグは安心したように笑って目を閉じた。
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「愛してるよ、リグ…………どうですか?今の似てました?」
「コイツ、そろそろヘドロばくだんの中心に置き去りにしてもいいか?」
ヘラヘラと笑う男をフロウは恨みがましい目で見た。ファウストの拠点に運ばれたリグは何十針も縫う羽目にはなったものの、数日後には目を覚まして…そしてこのように、フロウにちょっかいを掛けては笑っている。
「だってねぇ、フロウさん。自分のことは体の調子でわかるって言ったでしょう?」
「………確信犯かよ」
今後はぜってぇオマエの告白には答えてやらねぇ。
そう誓うフロウを見て、リグはまたもやケラケラと笑った。
