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ミスティア/陽の下での出会いと

ここはポケモンのみが住まうポケモン世界。

その世界にある大いなる峡谷の頂上"精霊の丘"で一日中太陽を眺めているポケモンがいる。

彼女の名はネイティオのティアラ。この世界の預言者として長らく役目を果たしている者だ。


(………来たか)


ティアラはいつものようによく見える頂上で大きな太陽を見上げ精神を統一させていたところ、ふと僅かに己の影がゆらりと揺れ動いた事に気付く。そして身長よりも丈のある長杖で地面をコツコツと軽くノックしながら見下ろし声を掛けた。


「挨拶くらいはしろと以前話したはずだが?」

「…………」


そう話すと日の当たりにより伸び切ったティアラの影からズズ…と薄暗くも目元にくまができ目付きが悪い青年が姿を現す。彼はやや慣れていない様子でボソボソと喋り始めた。


「…お…おはよウ」

「おはよう。もう昼を過ぎたがな」


ティアラは涼しい顔で瞳を閉じたまま対応する。はたから見れば初対面のような気まずさだが二人が会うのは既に何度目か数えられるほどある。


青年の名はミスティオ。最近此処に訪れる見慣れないゲンガーだ。

"この世界で現在見慣れている方のゲンガー"とはまた一味違った性格の持ち主で、散歩で此処まで訪れたらしい彼はそのまま時々彼女と共に太陽の光を浴び、日が沈んだ所で帰っていくなんとも不思議な関係である。

何をしに来たのか聞いても彼は散歩以外に答えるつもりは今のところ無いらしい。


「…オマエはいつも散歩ついでに此処に訪れているようだが、ワタシとずっと太陽を眺めていても退屈だろう?何故わざわざ此処に来るんだ?」

「……オマエじゃない。ミスティオという名があル」

「あー…無論記憶しているとも。そう怒るな。…で、どうなんだ?」

「………別に理由はなイ」


(ええ……思春期か何かか?それともゲンガーってみんなこんな感じなのか…?アイツもツンケンしてたし…)


長年この世界を見守ってきたティアラが思わずそう考えるほど、どうやらゲンガーという存在は噂を垂れ流したり足をつつくなど悪戯好きで好奇心旺盛、そして捻くれ者のようす。

名を呼ばれなかった事に対して拗ねているのか若干むす、としているミスティオに分からないようため息を一つ付き、話題を変える。


「初めて出会った時から感じてはいたが、オマエ…この世界の住人ではないな?」

「……………」

「はぐれ者か?…それとも…何か目的があって此処に来たのか?」

「……ナゼ俺の事情をそんなにも聞きたがル?」

「……この世界は美しく誇りある居場所だ。ワタシはな、そんな世界が好きなんだよ」


ティアラはミスティオと並んだ状態で大地から空を見上げる。


「ワタシはこの世界を守る義務がある。外部の者がどんな者であるか、目的は何か…この世界にとって害なる者は元の世界に帰還してもらっている。この世界を…この平穏を保つ為にな」

「…………」



「それで?ミスティオよ。オマエは何者なんだ?」





ざあ…と肌寒い春の風が二人の間をすり抜ける。

ティアラは相変わらず瞳を閉じたままだが、回答によっては容赦無い決断が待っている事を予測出来る雰囲気に彼は彼の存在を消すように黙り込む。


ほんの数秒後、沈黙が降り注いでいたところに彼女から再び口を開いた。


「……ま、今のところオマエから危険なオーラは感じないがな」

「…………、」

「許せよ?青年。ワタシは世界の為に存在しているのだ」






この日は一段と静かな空間だった。

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