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本編FIRST/レオララ⑨対面編

  • 7月11日
  • 読了時間: 8分

リアン

「ハア…」


深夜のテロ襲撃から避難した午前中。

ラララ…の変身魔術による姿リアンはなんとなく気になりあの爆撃で建物が損傷した飲食店に訪れ修復作業に手を貸していた。

はじめは被害にあった者達の様子を見る程度で済ませるつもりが店長に見つかり若者としてこき使われている最中だ。瓦礫が溜まった外庭をはわきながら小さなため息をつく。


リアン

(この世界も中々人使いが荒いナ……まあ給料は出るみたいですし……あんな状態のまま死なれたら居心地が悪いですからネ)


そんな言い訳を心の中で言い聞かせているとはつゆ知らず。一般から見たらか弱き好青年が修復作業を手伝っているようにしか見えないだろう。


はーい!感謝です〜!!!


一方その頃、昨日は成すべきことをし早々にUNIONに帰還していたレオンは、今朝もUNIONの命令により被害に遭った街の復興を手伝っていた。


見回りついでに、より破損の大きい方へと足を進める。ふと目に付いたのはヒビが入った飲食店の看板らしきもの。


レオン

(この店…前にお邪魔した事ありますが、まさかこんな所まで被害が及ぶとは。今回の襲撃は少々想定外でしたね)


そんなことを考えながら顔を上げると、見覚えのある姿が目に映る。


レオン

「……おや、貴方は」


リアン

(ゲ。何でコイツが此処に…)


遭遇率の多い事に内心げんなりしながらも表向きはリアンとしてパ、と明るめの声の調子で答え深々と頭を下げる。


リアン

「あ、警察さん!昨日はありがとうございました。警察さんも復旧作業のお手伝いに?」


レオン

「ええ、大方そんなところでしょうか。住民の皆様の生活を守るのが私達UNIONの責務ですから。事件を解決してそれより先を投げ出すような無責任な真似はいたしません」


どうやら彼もレオンのことを覚えていたらしい。彼とはテロが起きる少し前に出会い、エレベーターの待ち時間で会話をしたくらいだ。

そこから先の行方は知らなかったが、あのホテルにいたのだから当然、テロにも巻き込まれているだろう。


レオン

「ご無事そうで何よりです。貴方も…ええと、ボランティアか何かで?」


リアン

「ふふ、頼もしいです。UNIONの手を借りればこの辺りの復旧作業も早く終わるでしょうし助かります」


くすりと微笑みながら持っていた箒を持ち直し、瓦礫のくずや飛び散ったガラス等を集めようと再び周りをはわき始める。


リアン

「はい、深夜襲撃にあった時は救助隊さんのおかげで助かりました。クローヴィスさん…でしたっけ?貴方も無事で良かったです」


リアン

「ボランティアといいますか…実は私がバイトしていた場所はこの飲食店なんです。今は店長と一緒に片付け最中でして…」


レオン

「バイト…ですか?バイトの立場でも後片付けにも参加されているとは、随分と真面目な方なんですね。我々UNIONも貴方のその真摯な姿勢を見習わねば」


そんな他愛ない会話をしつつも辺りを見渡せば、昨日までの穏やかな空気が幻覚だと思えるほどにボロボロに崩れた建物が立ち並んでいる。


レオン

「にしても…まさかこのお店で働いていたとは。私、昔はよく此処にお邪魔していたんです。最近は忙しくて行けていませんでしたが…復興が終わったらささやかながら経営への援助の意味も込めてお邪魔しましょうか」


リアン

「ふふ、此処の店長にはお世話になっていますので。困ってる方を助けるのも片付けも、私でよければお安い御用です」


上品に微笑みながらもレオンくんと会話を続ける。外では崩れ落ちた建物をよそに瓦礫から取り出した木の枝を振り回しながら遊ぶ子ども達が走っている。


リアン

「え!そうなんですかっ?落ち着いたら是非来てやってくださいな、店長も喜びます。カインさんも先日同行した際に食べに行きたいとおっしゃっていましたよ」


店長

「リアンくん!そっちの状態はどうだ?……って、クローヴィスくんか!?久しいな!」


玄関から店長がひょこ、と顔を出しレオンくんの顔を見るなり目を丸くする。

此処の飲食店はフレンドリーさも売りの一つだ。店長は客人の名をよく覚えている。昔よくお邪魔していた、というのは本当らしい。


レオン

「おや、お久しぶりですオーナー。ご無事で良かった。…いえ、この状況で一概に"無事"と言うのは些か思慮不足でしたか」


奥から見知った顔が出てきたことにレオンは笑みを浮かべるが、瓦礫だらけの周囲を見渡し謝罪を述べる。

そんなレオンに対し、店長は気にしないでくれと首を振った。


店長

「にしても…君達。知り合いだったのか?」


レオン

「知り合い…という程の関係性ではありませんよ。昨日の騒動の前に少々お話する機会がありまして。無事が確認できたことを互いに喜びあっていたところです。そうですよね、リアンさん?」


リアン

「はい!今は別の場所に移動していますが、一時的にお忙しい中宿泊場所も提供していただき感謝しています」


店長

「兄が見つかるまで引き続き此処に泊まってくれても良かったのに。妻は全治まで掛かるしバイト分きっちり働いてもらうつもりだったからな!」


リアン

「あ、あはは…別に逃げたりしませんよ?」


妻の無事を確認後すっかり元気を取り戻した店長は昨夜の事を話題にしつつ笑い飛ばす様子に苦笑いするリアン。


店長

「仕事が終わったらまた来なよ、クローヴィスくん。美味い酒用意しておくからな」


レオン

「ええ、お気遣いありがとうございます。我々UNIONにも何かお手伝い出来ることがありましたら、何なりと」


店主の心遣いには、ありがたく答えておく。命が失われぬ限り、変わらぬ日々は戻ってくる。これは最前のパターンだが、そうした様子もレオンは幾度なく見てきた。


レオン

「そうですね……リアンさん、外の片付けをされていたようですが。私もお手伝い致しましょうか?そうですね…実は水を運搬するのがちょっとした得意なんですよ」


レオンのEM能力は『水流操作』だが、これは掃除にも割と役に立つのだ。壁の汚れを手を汚さずに拭き取ったり、バケツで運ぶような重労働を行わずとも大量の水を運ぶことが出来る。


リアン

「わあ、お水を操る事が出来るんですか?凄いですね!」


店長がまた店内に戻った後、レオンくんの水流操作能力に目を丸くする。彼の戦闘スタイルは一度見ているが、水を操作する様子はまだ拝見した事は無かった。

まだEM能力をほぼ確認した事がないラララにとってこれは良い情報を得たなと内心思う。


リアン

「クローヴィスさんがお時間大丈夫でしたら、是非よろしくお願いします。周辺のガラスの破片や土埃はある程度取ったのですが、壁の汚れは中々取れなくて…」


見ると爆発に巻き込まれ泥や黒焦げになった壁がちらほらある。いくつか建物が破損しているので修復し開店するまでまだしばらく掛かるといったところか。


レオン

「はい、喜んでお手伝いさせていただきますよ。その為に此処に赴いたようなものですので」


黒く汚れた壁に向けて、強めの水流を吹きかける。火災の後には建物が焼け焦げた焦げ臭い匂いが残る。今まで通りの穏やかな街並みを取り戻す為にも、こうした二次被害は素早く取り除かねばならないのだ。


レオン

「水は生命を育むエネルギーでありながら、万物に姿を変えることが出来ます。私の能力は“液体全般の流れを操る”ものですから、水そのものを生み出すことは不可能ですが。この水は、近くの川から流れを通して掻き集めたものなんです」


EM能力を他者に明かす…というのは、エデン大陸の能力者達の中では友好の証と言っても過言ではない。無論、レオンはもう一つの能力を持っているが、二つの能力を持つか否かを判断することは出来ないのだから。やはり、警察といい立場上、市民からの信頼と友好は大切なのだ。


リアン

「ひゃ〜〜、汚れがみるみる内に綺麗になっていきます!とても便利な能力なのですね。おっしゃる通り、水はどの面においても必要不可欠ですから。…よおし」


黒かった壁が水流で白さを取り戻し、汚れは泥となりコンクリの床へと流れていく。そんな様子を見て意気込んだリアンは箒でザッザッと端の地面まで誘導し流す。この調子なら思ったより早く掃除が終わりそうだ。

レオンくん自ら開示した液体全般の流れを操る情報はまだこの世界のシステムに慣れないラララにとって大きい。ラララはさり気に続ける。


リアン

「ずっと操るのは大変じゃないです?適度に休憩も入れてくださいね!」


レオン

「いえ、ご心配なく。炎上した建造物を消火する作業に比べたら可愛いものですよ」


例の爆発テロを皮肉りながら、レオンは地面に流れた汚れた水をかき集める。このまま川に流せば公害になるのだし、山にでも撒いてしまおうか。


レオン

「EM能力を見たのは初めてですか?能力の系統にもよりますが、日常生活において使用される方もいらっしゃるので。不快に思われたら申し訳無いですが、貴方のようにEM能力を目にして嫌な顔を見せない方は珍しいように思えます」


リアン

「はじめてではないですよ。…クローヴィスさんは欠損者に対し差別をするようなお方なのでしょうか。私にはそう見えませんし、店長も分かってるから親切なのでしょう?」


レオンくんの能力によりかき集められる泥水を眺めながらポツリと返答するリアンの表情はどこか遠い景色を眺めてるかのようだ。


リアン

「此処、欠損者を持つEM能力者の方も労働しているようなんです。私も匿ってくださった身ですしね」


話しながらレオンくんの隣を横切り空を見上げた際、ふわりと香水の香りが舞う。それはラララにとって未だ"気が付いていない隙"である。


にこりと笑顔を向けたその時。

─────ドン、と近くのビルから爆発が起きた。


リアン

「っ!?なんです…!?」


レオン

「……………相変わらず、この街も物騒なことで」


レオンは溜息をついた。昨日に引き続き、またもや付近で爆発など。どこの街もこんなに物騒なものだろうか?と考えてしまうあたり、この街の物騒さにも慣れてしまっているのだろう。


レオン

「私が確認してきましょう。早かれ遅かれ、UNIONからの招集がかかるでしょうから。状況がわかりませんから、リアンさんはここで待機をお願いします」


リアン

「あ…、は…はい。分かりました。お気を付けて」


淡々と手慣れた様子で指示を出すレオンにリアンはおず…としながらも首を縦に振る。此処数日間エデン大陸に過ごしてみて予想以上に物騒な地域である事はラララも理解し始めている。


リアンはその後店長へ報告の為一度飲食店の中へ入り込む。その間爆発した場所から僅かに子どもの声を聞いた気がした。

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