恐らく気が付いてる
- 7月12日
- 読了時間: 4分
薄暗い牢屋の中で特殊な鎖に巻かれ拷問椅子に座り身動きが取れなくなっているリグは短くなった尻尾を眺めながら高笑いし外で見張り役している人間に声を掛け続けている。
うざったく思われればリグの腹を蹴り上げ黙らせようとしているようだが、うめき声は上げるものの表情とテンションに変化は無く。
尻尾が戻る度に痛覚を感じる根元から切り落とされ腕の骨を折られるなど散々な目にあっているものの彼の口数が減る事は無い。永遠に喋り続けとある日ぶつんと何かが切れたかのようにぐずりだす。アドレナリンで感覚麻痺している間は防衛本能で何とかしているのだろう。
そんなリグの極端な様子に一般の人間が理解出来るはずもなく単純に気味悪がるものの、ただ命令に従いトカゲの尻尾をもて遊ぶかのように切り落とすだけだ。
彼が殺してきた人数分。上司はそんな事を言っていた。その間に精神崩壊し狂い死ぬか、出血多量ショック死するか、時間の問題ではある。
トカゲの尻尾はヤドンの尻尾と同じく美味いものなのだろうか。1週間ほどこのような惨状が続きそろそろ爬虫類の拷問にも飽きてきた頃。
ふと己の影が揺らいだ気がして見張り役の人間は目を丸くする。少しの間影を見つめていると…
「──────!?げふっ!」
「えっ」
急に足場が泥のように崩れズブズブと影の中へと引きずり込まれていく。悲鳴を上げ必死に脱出しようと両手でもがくが足元をすくわれてはなにも出来ずそのまま闇の中へと消えていった。
一瞬の出来事にぽかんとしていたリグだが、その影の中からふわりと浮遊し登場したポケモンを見て納得の表情へと変わる。
「ようこそフロウさん、血なまぐさい牢獄へ。よく此処が分かりましたね?」
私貴方に依頼しましたっけ?と笑顔で迎えるが声を掛けられた彼フロウは無視しリグの姿を見るや否やズカズカと牢屋の中を潜り電気が走る鎖へと手を伸ばす。
ばちっと音が鳴ったがリグへ電撃が通る前にフロウが止めたのだろう、毒で腐った鎖はボロボロと崩れていく。
自由になったリグはそのまま地面へと倒れる。どくどくと流れる尻尾からの出血にまた傷口が開いたのだと判断する。血って意外と温かいんですね。爬虫類にとって体温は必要不可欠ですから。ああ、このぬくもりに抱かれながら今すぐにでも眠ってしまいたい。そうブツブツ話していると
──────べしっ
「いった!?」
遠退いた意識から頬への平手打ちにより叩き起こされたリグは渋々と起き上がる。気絶してしまえば楽だというのにこの男は此処での気絶を許さないらしい。不機嫌そうな目と合い思わず苦笑いする。
フロウは出血した尻尾へ急遽長めのタオルで絞り圧迫止血するとリグの肩を寄せて上半身を起き上がらせ影の中へと潜ろうとする。
少し遠くから聞こえる破壊音と聞き覚えのある声。そう。フロウに焼き鳥と言われてる彼。しばらくは彼に任せることにしたのだろうか。
「救助隊ならもう少し丁重に扱ってくださいよ、私一応怪我人なんですから。…あはは!何ですかその仏頂面は。…ああそれと私の尻尾見掛けませんでした?長らく切り落とされてたんですけど何本目かは数えていなかったもので」
ピタリと潜り込む動作を止めじっとリグを見るフロウ。ペラペラと喋り続けるリグをしばらく無言で様子見した後、
「…っ!」
急に口付けされた。乱暴で不器用ながらも優しさを感じさせるキスに驚き固まるリグに構うこと無く続ける。
こうして少しの間重ねた後フロウは離れ裾でごし、と自分の唇を拭いたのちに何事もなかったかのように影の中へと誘導する。
そういえばキスされている間、ほんの僅かだが苦痛が和らいだ気がする。
少々正気に戻ったのか急に黙り込むリグをやはり無視するフロウと共にやがて影の中へと消えていった。
++++++++
「報酬。寄こせ」
「ええ…貴方が勝手に来たんじゃないですか…。いえ喜んでお渡ししますとも。あ。ついでなんでもう一つ良いですか?」
「…?」
「えっちしましょうフロウさん!」
「帰る」
「待って待ってください。私を救うと思ってくださいよ!」
「は?何言って…」
「救助隊なんでしょう?」
「…っ、オレは風俗じゃねえんだぞ。こんな時に盛んなクソガキ、さっさと寝ろ!」
「眠れないんですよ〜痛くて痛くてたまらないんです」
「オマエ…、っ寄るな酔っ払い!血なまぐせえ!」
ほらこう言えば彼は断れない。
