#うちよそ リプシュネ出会い編
- reisetu
- 2024年12月28日
- 読了時間: 12分
更新日:1月16日
ごうごうと鳴る火の海の中央で立ち振る舞う王の背中は当時から大きく、そして孤独と戦っていた。
―――――――――✃
拳脚乱王ラベイル「光の属性王リプトライト・スタン。星の属性王リュカ・プラネット。両者前へ」
此処は王様『拳脚乱王』が統治する小人の国。拳士村と乱士村の真ん中に建つ白い城で今、王ラベイルによる命が属性王達に告げられていた。
リプトライト&リュカ「「はい」」
属性王とは小人界に存在する魔法属性の頂点に立つ者達の事で拳脚乱王を護衛し小人の文化、言わば小人界文明の繁栄の為の活動を行う事を目的とする。
城の最奥で気品のある振る舞いを見せそこに立つラベイルの前に呼ばれた二人、星の属性王リュカと光の属性王リプトライトが頭を下げ参上する。周りでは他の属性王達が静かに見守っていた。
ラベイルは最初にリプトライトへ視線を向け指示を出す。
ラベイル「君にはいつも頼んでばかりですまないが、新たな異世界との外交活動に協力してもらいたい」
リプトライト「そう卑屈になる事はないぞ我が王よ。このリプトライト、どのような活動でも必ずや王が満足する成果を出して見せようぞ」
自信満々に話すリプトライトの様子にラベイルはフ…と柔らかく微笑む。
リプトライト「して、部下の同行は必要か?依頼の規模は?」
ラベイル「今までのような殺伐とした場所ではないから部下の同行は必要無いだろう。それに君個人に頼みたい事だ。何せ今回交渉してもらう内容は食文化に関してだからな」
リプトライト「…ショクブンカ?」
リュカ「えっ。この人がですか?」
ティカ「しーっ!確かに戦闘以外の実力はちょっとおドジなところがあるけれどそれも些細な事なんだから本人の前で言っちゃ駄目よ!」
リュカ「お姉ちゃんが全部言っちゃってるです…」
すっかり退治や同盟関連の活動と考えていたリプトライトは目が点になっていて、隣で話を聞いていたリュカが思わず口を挟む。リュカの姉ティカもうんうんと頷いていて他の属性王達も困惑しているようだった。
リプトライト「お言葉だが我が王よ、この私に食の文化を会得しろと言うのか?」
ラベイル「嫌だったか?」
リプトライト「そんな事は無い!どのような活動でも成果を出すと話したはずだ。しかしだな…ううむ…如何せん私に務まるのかいささか疑問でな。理由を聞いてもいいだろうか?」
リュカ「ま、まともなこと言ってるです」
ティカ「流石王様への忠義は抜かり無いわね!」
ラベイルはどこか懐かしむような顔で話を続ける。
ラベイル「君は昔からよく動いてくれている。実力も申し分ないくらいに。だからこそ、新しい世界にも心を開いてほしいと私は願っているよ。……それは此処にいる者達、いや…全ての民に対して思う」
リプトライト(心を開く、とな?この私が見落としていると?それとも小人界に足りぬものか?我が王は一体何をお考えなのだろう)
「…あいわかった。食は人類にとって必要不可欠なもの。私も美食家の第一歩を歩み始めるとしよう」
ラベイル「君の活躍にも期待している。ではムルクの鏡の調節が終わり次第伝達を送ろう。それまでに支度を終わらせるように」
リュカ「はいです」
リプトライト「承知した」
外交活動の協力をすることになった二人が答えるとラベイルも頷き、異世界へ移動する手段として必要なムルクの鏡の場所指定等の調整を行いに城を出て行った。
リュカ&ティカとの会話を終え別れた後リプトライトは部下達を城の外へ集合させ自身が異世界に赴く事を伝える。
リプトライト「…という訳だ。またしばらく留守にするが引き続き王の護衛をよろしく頼むぞ!」
部下達「「ハッ」」
副隊長「隊長、今回はどのような交渉をされるおつもりでしょうか?」
リプトライト「王は食文化の共有を要望しているようだ」
副隊長「ショクブンカ?…隊長が……ですか??」
リプトライト「うむ」
副隊長「あ、新たな世界とお聞きしておりますし何か策などは…」
リプトライト「ない!」
副隊長「………。やはり我々もお供するべきでは…」
リプトライト「なあに、大丈夫だ!私は強いからな!何かあってもなんとかしてみせるぞ」
副隊長「何かあってからでは困るんです!戦いに行くのではないのですよ…!?」
リプトライト「?」
「あの隊長が?」「隊長騙されやすいし高額で食料持って帰ってきたらどうしよう」「そもそも何でも美味としか言わないしなあ」など部下達がざわついてる中頭を抱える副隊長と何も気が付かないリプトライトは首を傾げる。
副隊長「い、今からでもライベル王へ我々の同行の許可をいただきに…」
リプトライト「おお!我が王の準備が終えたようだ。それではな!」
副隊長「ってああああ隊長〜〜!!」
結局リプトライトは部下達の話を最後まで聞くことなくさっさとムルクの鏡がある場所まで翼を広げ飛んでいってしまった。
……………。
ラベイル「指定は出来た。準備は良いな?」
リプトライト「はい」
ムルクの鏡は森に囲まれた状態で城の背後に設置してありかなりの大きさだ。鏡は水面のようにゆらゆらと揺れていて魂のようなものが沢山映し出されている。
リュカ達の前にまずは先輩であるリプトライトが一番手に名乗られ、堂々とした立ち振る舞いでラベイルの元へ歩み寄る。彼は既に異世界への転送を何度も経験しており、数々の実績を持つ。しかし今回の外交は少なくとも彼にとって一筋縄ではいかないようだ。
ラベイル「では、行ってきなさい」
王の合図と共にリプトライトは笑顔で勢いよくムルクの鏡の中へと飛び込んで行った。
―――――――――✃
空間。
呼吸が出来る海の中を水族館感覚で彷徨っているような、そんな空間をリプトライトは水流に逆らわず目的地に辿り着くまでの間宙に浮き移動していく。今回向かう異世界はリュカ&ティカが転送された異世界と同じく海が鍵になるのか辺り一面に青色がひろがっている。
リプトライト(世界と世界の狭間…この感覚も久しぶりだな。どうやら私が向かう世界は海を大切に…いや、重要な鍵となるか?広がる海が美しい)
そこでふと何かが視線をよぎる。
リプトライト(む?)
まず見えたのはしろいふわふわな妖精のような朱色と紺色の存在が二つ。そのふわふわな存在はとある長身の男性に懐いているようでそばを離れない。
黒い羽のような髪飾りに白銀の短髪。そして上品な布質を想像させる柔らかでいて清潔感のある白を中心にした礼服はひらひらとレースのように海中を漂っている。
男性は深海のような吸い込まれる細い瞳でただじ、とリプトライトを見ていた。
(……いや、見極めている?世界の狭間の間は干渉出来ない。実際の場所とは異なるはずだが…私がこの世界に来る事を知っているのか?)
近くにもう一人様子を探るかのように見てきている人物がいた。こちらは表情は然程硬くないもののふわふわな存在を連れている男性よりもやや警戒しているようにも見えた。よほど仲間が大切なのだろうか。それとも無意識に避けているのか。青色の瞳の奥は読めない。
リプトライト(…ふむ。意味があるかは別としてこのまま通り過ぎるのも良くあるまい)
リプトライトはしばらく考えた後にっと満面の笑みで片腕を上げ大きく手を振りながらこう話した。
リプトライト「我が名はリプトライト・スタン!また会おうぞ、海の友よ!」
満足したのかリプトライトは二人に背を向けそのまま再び意識を異世界へ集中させた。
………。
リプトライト「とう」
どこからともなく空間から輪っか状の光が集まる。そこからリプトライトが登場しカツリと足音を鳴らしながら地面へ降り立つ。
リプトライト「おお、此処が王が話していたアスルアス聖国か!なるほどなるほど、やはり海の都か?………へっくち!」
ぐるりと見渡せばまるで海の上に浮かぶようにして並ぶ白い建物達が彼を出向かい、街の至る所に川の道が続いている。中にはゴンドラで移動する様子も見え、どうやら想像以上に人も盛んだ。
リプトライト「い、意外と肌寒いな…!?外にいる間は光魔法を使うとしよう」
リプトライトは腰のホルダーに装備したレイピアのグリップを掴み軽く指先で柄頭に触れると白いオーニソガラムの花が一輪咲き体内へ浸透する。すると彼の体内温度が寒さに耐えられる程まで上がり、リプトライトの手の冷たさが消えた。
リプトライト「うむ、流石私。パーフェクトだ!」
ライアの民「ちょっと貴方、旅のお方?」
リプトライト「うおっ?」
急に背後から声を掛けられ振り向くとそこにはリプトライトを物珍しく見つめるライアの民達にいつの間にか囲まれていた。
ライアの民「おやまあこの世界に来るなんて幸運なお方だねえ」
ライアの民「見ない顔だな…一体どこから入ってきたんだ?」
リプトライト「これは失礼した!驚かせてすまない、民の者達よ。私は民や王を守る為の騎士だ。君達を傷付けるつもりはないから安心してくれ」
ライアの民「騎士?聖騎士様のお知り合いですの?」
リプトライト「おお、聖騎士がいるのか!この国の王に用事があってな。是非お会いしたいのだが何処にいるのだ?」
ライアの民「フィリア様だったらレギュラスにいますよ。ようこそ、アスルアス聖国へ!」
リプトライト「う、うむ!とても美しい国だな!」
(なんて事だ、異国人に対してこうも歓迎してくれるとは…余程王が信頼されているか、此処の者達は比較的豊かなのだろう)
特に不審に思う事もなく最奥の方角レギュラスと呼ばれたこの街のさらに中にある景色達を指差し笑顔で接する民達に驚き、争い事も少ないのだろうと内心安堵する。
リプトライト「道案内感謝する、民の者よ」
ライアの民「あっ騎士様、そこにある魔導具でレギュラスまで移動出来ますよ!」
リプトライト「心配いらぬ、私には“足“があるからな。ではな!」
リプトライトは民達へ手で別れの合図を取ると足に力を入れる。次に足元から光り輝きダンと地面を蹴れば一つの線となりそのままレギュラスの門へと雷閃の如く飛んでいく。小さな火花を残し一飛びしていったリプトライトを民達は呆然と見送った。
リプトライト「たのもーー!」
──────ダ ァン!!
警備兵「!?な、なんだ!?」
レギュラスに続く門の前で閃光が落ちリプトライトが姿を現すと門番である警備兵達が警戒し槍を構える。
リプトライト「あっ。必要無いと思っていたが魔導具で移動した方が警戒されなかったかな…まあ細かい事は気にしない!」
警備兵「貴様、何者だ!」
リプトライト「私は小人の国の騎士である!拳脚乱王の命により至急異世界より参った!此処を通してはもらえないだろうか」
警備兵「小人の国…?異世界人?貴様はそのなりで小人と申すのか?」
警備兵「そうだぞ優男め!」
リプトライト「ヤサオトコ?確かに今は諸君と同じ等身だが魔力で補っているにすぎない。修行者と違ってマジック・リーズの同行の必要もないしな」
警備兵「???」
リプトライト「とにかくだ。私は王との交渉を命じられている。決して手出しはしないと騎士道に掛けて約束しよう」
マジック・リーズ<選ばれし時の魔法使い>とは相棒となる魔術の素質がある人間の事で、通常王から与えられた様々な試練をパートナーと共に取り組み実力を上げる仕組みになっている。試練中の小人は未熟な為パートナーと契約し魔力を共有する事で人間姿になれるのだが、リュカ達は属性王にまで行き着いた実力者である為パートナーがいなくとも自らの魔力で補強可能なのだ。
実力者である分試練の必要がない代わりに小人界や次世代の未来の為外交活動に力を入れる機会が多い様子。これも昔ながらの小人の文化である。
警備兵「!おい、アレ…!」
リプトライト「む?」
リプトライトの言動に警備兵達は顔を見合わせ困惑していると一人の兵が空へと声を上げる。リプトライト共々見上げるとそこには果てしなく続くオーロラがカーテンのようにひらひらと舞い踊り空の色をガラリと変えていた。神秘的な自然の光景にリプトライトは目を輝かせる。
リプトライト「オーロラとな!?なるほどこの気温なのも頷けよう。この目で見るのは久しいな…!」
警備兵「間違いない、アルティリア様だ」
リプトライト「アルティリア様?」
警備兵「誓花神さまさ!この世界の創造神、星の加護を与えてくださる祈りと花の女神様だ。貴様…いや、君はアルティリア様に歓迎されたんだぞ。光栄な事と思い給え」
警備兵「アルティリア様が気に入るぐらいだ、悪い奴ではないんだろ?あんた!さっきは悪かったな!」
リプトライト「う、うむっ?よく分からぬが理解いただけて何よりだ、感謝する!」
先程とは打って変わって槍を降ろし敬礼する警備兵達に首を傾げつつも通る許可を得た事に感謝を述べる。
リプトライト(はて…彼らが信仰する花の女神殿とはお会いしていないはずだが…もしやあの海の友と同じく私がこの世界に来る事を知っていたのかもしれぬな。何はともあれ女神殿に感謝をせねば。……何処で会えるのだ??)
警備兵「どうぞお通りください、リプトライト殿」
警備兵「私達も役目があります故フィリア王の元まで同行させていただきますぞ」
リプトライト「あっ。うん」
割と脳天気な事を考えるも今は王と面会するのが先だと割り切り一部の警備兵と共に門をくぐる。
一般市民の住むライアと区切り建つのは王族や貴族が住まうレギュラスだ。建物等の風景は白をベースにした品のある形状で然程変わりは無いが、そんな中リプトライトが目を惹いたのは庭園一面に広がる青と白の花畑の中心で花達と戯れ微笑むとある少女だった。
白と紺のフリルを纏い、よそ風と共にふわふわと揺れる長く透き通った薄花色の髪。優しげな目付きに星を連想させるひし形の瞳孔。彼女はリプトライト達に気付き顔を上げる。
シュネル「?貴方様は…?」
リプトライト「!こ、これは失礼した」
無垢な光景にしばらく黙って眺めてしまっていたリプトライトは鳥のさえずりのように可愛らしい彼女の声に我に返り慌てて一つコホンと咳をし気を取り直す。
リプトライト「光の属性王リプトライト・スタン。この通り騎士だ。拳脚乱王の命により異世界から参った」
シュネル「貴方様も騎士なのですね。はじめましてリプトライト様、冬の聖騎士シュネル・セイリオスです」
リプトライト「おお、君が聖騎士殿か!民の者から話は聞いている。お会い出来て光栄だ、冬の戦乙女よ!」
シュネル「ひゃ、わ、私も異世界の方とお会い出来て嬉しいです。よろしくお願いします…!」
警備兵「ら、乱暴は駄目ですぞリプトライト殿!」
挨拶が終えるや否や堂々と彼女と両手で握手を交わすリプトライトの大胆な行動に警備兵達から慌てて指摘され少ししょんぼりとする。
リプトライト「えっ挨拶のつもりだったのだが…すまぬな!」
シュネル「ふふ、いえ!びっくりしただけですから」
最初は目を丸くしたもののどうやら嫌がってはいないようでシュネルはクスクスと口に手を添え笑っている。つられてリプトライト達も笑顔になった。
シュネル「リプトライト様はフィリア様にご要件があるのですよね?」
リプトライト「ああ。主に挨拶と文化的な交渉についてな。もとより悪さをするつもりはないが、護衛を付けてもらって良いぞ」
シュネル「文化的な…ですか?リプトライト様は民の方、警備兵の方々、そして私にも丁寧に挨拶をしてくれました。私には悪い方には見えません」
リプトライト「そうか?聖騎士の君にそう公言してもらうのは心強いな!」
ニコリと微笑むとシュネルは警備兵達へ声を掛ける。
シュネル「此処まで連れて来ていただきありがとうございます。フィリア様までのご案内は私が引き継ぎますね」
警備兵「承知致しました」
―――――――――✃
続きます。少しずつ追記中…
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