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「ファフちゃん、今日も買出しかい?」
「…うん…」

 

貴方がボクの身体から離れてどれくらい経ったかな。最近は慣れなかった依頼事も、貴方のおかげで大分こなせる様になりました。

相変わらず今でも時々猫を探す依頼を貰うの。そういえば、どうして猫を探すのかって聞いたらエコーは「訓練になるから」って言ってたよ。貴方が聞いたらきっと怒ってしまうかも。

「頑張るねえ。…ほい!今日は出来立てなんだ、持って行っておくれよ」
「…ありがとう……」

ぷちりょーしゅか自身が有名だからだと思うけれど、街に出るといろんな人が話し掛けてくれるの。

美味しいパンを貰ったり、情報提供してくれたり。ハリー…お父さんは「知らない人に話し掛けられても着いて行くな」とか「遅くなるな」とか言うけれど。心配性なのかな。
あ、お父さんはね、最近ククとドリーでよく出掛けてるの。きっとティミの所…オルガに会いに行ってるんだと思う。
こうしてみるとね、とても家族みたいに見えるの。

「おやファフちゃん!どうしたんだいその花は?」
「カムに…持って行く分…」
「そうかそうか、きっと喜ぶぞ」
「…うん」

あの時の事件で、ますますぷちりょーしゅかは有名になった。それは何年経っても忘れる事の無い記憶なのだけれど。
カムもイゾも、今では幸せそうだから。無事で本当に良かったって、思えるの。ティミ達のおかげでもあるし、お父さん達も協力したから。きっと想いが伝わったのかな。

 


ねえ シャフ。
あの時、カムを止める為に皆の元へ一直線に向ったよね。
消えそうな身体を抑えながらボクとシャフは、ティミリアの皆も、ハリーの皆も、他に関わって来た人達も、必死になって止めようと戦った。
きっとね、カムもイゾもつらかったと思うの。
そして同じ位に皆も、つらかったと思うの。


ボクね、その時知った。
皆何かを『愛している』からこそ、こんな気持ちになる時もあるんだって。
自分にとって大切な人達だからこそ、色んな想いを共感しているから、その心を知っているから、だからこそ何かを『愛する』事も出来るんだと。
自分自身を変える事も、出来るんだと。

ねえ シャフ。
ボクはシャフの事、愛してます。
此処の人達全部、愛してます。

そう思える様になったのは貴方のおかげなの。貴方のおかげでボクは変わる事が出来たの。

シャフは、どう想っていますか。
あいしていますか。

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「シャフー?何ぼーっとしてんのや」
「……別に」
「あ、それファフからの手紙か!何て?」
「さあな」
「教えてくれたってええやんー」
「知るか」


「聞きてえんだが」
「ん?」
「この船、定員オーバーじゃなかったのかよ?」
「ああ、一人置いてきたから平気や」
「……何気に酷え事するんだな、お前」
「男は一度でも一人旅させた方が強くなるんやで!」
「どうだか。恨まれてなきゃ良いがな」

 


「…なあシャフ。いつになったらファフ達に会いに行くん?俺の船だったらすぐ向えるで?」
「まずはてめえが海賊になってからだろうが」
「いや、せやけどなー…。海賊って何すればええん」
「盗み」
「それ以前と変わっとらんわ…てか盗みはあんま好まん!」
「じゃあ向いてないかもな」
「……シャフー……」
「……はあ…」
「あ!今ため息ついた!?それでも親友か!!」
「うるせえ。てめえの妹らが海賊にするよう仕事頼まれて仕方無く此処にいてやってんだ、
てめえはさっさと海賊らしい事の一つや二つこなしてこい」
「何でそんなツンツンしとるんや、クっくんより酷いで!?ちゃっかり俺があげたリボン着けてくれてる癖に!!」
「な、関係無えだろうが…!YOU!」

「…てめえは俺の『本体』、見つけたんだろ。あん時みてえに、探し物のプロにでもなりやがれ」
「……あれは、『シャフ』が見つけたんやで。俺や、ない」
「……けど、地下に行ったのはてめえもだ」
「まあ…せやな。まさかそこにシャフ自身があるとは思っとらんかったけど。
少なくとも…『前のシャフ』はこうなる事を知っとったんやろうなあ」
「どうだか」


「…」
「…」
「……なー、シャフ」
「今度は何だ」
「お前、変わったな」
「…」
「きっとティミちゃん達のおかげや。…俺、安心した」
「…」
「けど、まだまだこれからやで。もっと沢山ええもん見せたるわ。このでっかくて綺麗な海や空だけじゃなくて、街も人々も全部」
「…」
「だから…もう人を嫌いになんかなったらあかんで?世の中には楽しい事も大切な人も、数え切れんほどおるさかい」

「……。――――、」
「ん?今、何て?」
「嫌いにならねえよ」






俺は にんげんをあいしているからな



 

 

 

 


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(…何気に、恥ずかしい事言えるんやな)
(うるせえ)

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