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ルイアニェ/監視という名の暇つぶし

  • 2月9日
  • 読了時間: 5分

「おうおうそこの性悪強欲神、N様の通行の邪魔だどけ」

「ああん?誰かと思えば金魚のフンの如く仮面に付きまとうストーカー野郎じゃねえか」

「ストーカーはてめえだろーがこのサイコパス!!俺様はれっきとしたN様の忠実な補佐だ!!!」


此処はジュピターをはじめ神様や神子達がいる神殿。…の廊下でばったりと出会う。

総じてReisetuと呼ばれる世界から訪れた同じく神様が二人。その内の一人、破壊神ノイズがジュピターに噛み付くようにして難癖付けていた。

N様と呼ばれたもう片方の人物、創造神Nは二人のいがみ合いを日常茶飯事のように受け入れていて笑顔で聞いている。面倒そうな様子で受け答えするジュピターの態度にますますノイズは激怒した。


「っるせーなあ、此処はてめえみたいなガキが来る場所じゃねえんだよ。さっさと失せな!」

「はん!心が狭え神様が上官とは部下の苦労が見えるぜ、言われなくともN様が此処に用が無けりゃこんな場所にわざわざ来ねえよ!」

「何の用だよ仮面」

「いや?特にこれといった用事は無いな」

「えっ。…N様が足を運んだだけでもありがたいと思え!!」

「開き直ってんじゃねえよ!!!」


せっかくの神秘的な印象のある神殿で行われているのは人間と然程変わらない口喧嘩だとは地上で生きる者達からは想像もつかないだろう。

付き合ってらんねえと深い溜息を付き背を向け立ち去ろうとするジュピターへ今度はNが思い出したかのように声を掛ける。


「ああ、そういえば。最近ではこっちの世界で金色の神子様が世話になってるぜ」

「……アニェラの事か」

「そう。此処にも時々手品師を連れて来てるんだろ?気難しいだろうが根は優しい子さ。引き続きよろしく頼むぜ」

「…?手品師って誰の事だよ?」

「感の鈍いやつだな、ルイフって奴だよ。お前がお熱してるスフィーとかいう奴のそっくりと一緒だっただろ」


ノイズの煽り言葉を無視し手品師と呼ぶ人物を特定の為推測したところ、最近になってアニェラが特に気にして一緒にいる者はルイフという人間だけだった。共にいる…というより最初はアニェラがルイフを誘拐してきたようだが。

よろしく頼む、というのは仲良くしてくれの合図と共にあちら側の世界の住人であるルイフがアニェラによって危険な目に遭わないかの監視も含めて話しているのだろう。つくづく食えない神様達である。ジュピターは密かに目を細めた。










+++++++++++++


「…………。」

「…………。」


そんなこんなで神達との会話は終え休憩がてら待合室へと向かったところ、運が良いのか悪いのか噂していたルイフの姿があり沈黙する。アニェラの姿は無く一人で本棚の本を読み漁りながら静かにソファーに座り彼の帰りを待っているようだった。


よお、とジュピターは声を掛け手を軽くあげればルイフは本から顔を上げ一瞬目を丸くした後にパタリと本を閉じ椅子から立ち上がり、その場で一礼する。普段は神子であるアニェラ相手だろうが不良並みの私語で話すルイフだが、ジュピターのような圧の強い神相手となると流石に礼儀を弁えているのか敬語で話す。流石おぼっちゃま育ちと言うべきか。引き際を常に伺っている。


「アニェラを待ってんだろ。座ってて良い」

「………はい」

(…こいつと二人きりになるのはこれで2回目か。………。仲良く、ねえ…)


向かい合わせで座り再び沈黙。目を合わせようとしないルイフの表情はいつもより固めできゅ、と唇を閉ざしている。一度目に聞いた問い以降大方また問われないか警戒しているのだろう。

ジュピターにとってそんな隠そうと努力している緊張した様子が面白くてルイフには分からないようくつくつと喉で笑う。


「お前、手品か何かしてるんだって?」

「え?」

「風の噂で聞いてな。手品師だと。俺にも何か見せろよ、アニェラが何に惹かれたのか興味がある」

「……神様に見せるほどの高度なものではありませんので」

「つれねえな」


クク、と笑えば今度は聞こえたらしいルイフは眉間にしわを寄せ若干睨んでくる。


「ま、確かに言われてみりゃ芸をするような格好ではあるよな。お前身嗜みがなってるし」

「この衣装はサーカス団の方々からいただいた要望を元にして俺の…父がオーダーメイドしたものです。俺の趣味ではありません」

「サーカス団?なんだ、それで手品が上手いのか」

「正式入団はしてませんが…子ども達が喜ぶので。……それだけです」

「ふーん」

(頼まれたら断れないタイプか。生真面目だな。…まあコイツアニェラの事を優しい奴って言ったくらいだし、それもそうか)


ほんの僅かだがルイフという人物像が見えつつあるジュピターは話を続ける。


「にしてもそんなに父が好きとはなあ」

「………違います」

「好きじゃなきゃそんな格好も受け入れてるわけねえもんなあ。可愛いとこもあんじゃねえか、ん?」

「……………………帰ります」

「お前一人じゃ帰れねえだろ、此処は神殿だからな」

「……っやろ………」

「おーおー、化けの皮が剥げてきたか?」


アニェラの話によるとルイフがいる場所は教会らしい。子ども達というのも孤児の事も示しているのだろう。神にとって神を信仰する者達に対し方針はあれど少なくとも全てを無下にする事は無い。

彼の場合まだ不明ではあるが、暇つぶし程度にアニェラと共に見ていても問題は無いだろう。


せっかくなのでアニェラが来るまでの間思う存分弄り倒してやった。先程のうるさい神への八つ当たりだ。


数日後アニェラやスフィーからのお怒りを受ける事になるのはまた別の話。

 
 

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