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ミスティア

  • 4月7日
  • 読了時間: 3分

「…いるんだろう?ミスティオ」


精霊の丘の頂上で1日中太陽を見つめるネイティオ・ティアラは己の背丈よりも大きな杖で真下の影へコンコンと軽く叩く。すると影が不自然に真後ろへ伸びていきゆっくりと少年が顔を覗かせる。


「…どうしていつも分かル?それも予言カ?」

「どうだろうなあ。オマエはこの世界のポケモンでもないしな、予言といっても毎度明確に見えるわけじゃないんだ」


足元からワタシの足を引っ張ってくるのはオマエだけだがな?と一つ笑えばミスティオは気まずそうに目を逸らす。

のこのこと影から姿を現したミスティオの頭上にはいつもは無いものがあり、ティアラは気が付く。


「なんだ、また花見でもしてたのか?花びらが頭に付いたままだぞ」


指摘されたミスティオは慌てて自分の頭にかぶった帽子をパタパタとはたき桜の花びらを地面に落とす。


「広場に行ったらまだ満開だっタ…」

「ならもうしばらくはどんちゃん騒ぎだろうな。ワタシも近々酒でも飲みながら桜を楽しむとするか」

「飲み過ぎ良くなイ」

「花見の季節くらい良いだろ?ほら、オマエ最近プクとカクレオンの店に通う時があるそうじゃないか。ついでに甘酒も買ってきてくれよ」

「ラックと同じくパシル…」


ジト目で見てくるミスティオにカラカラと笑う。


「まあそうツンケンするな。…ふむ、そうだな。酒を買ってきてくれたらワタシの目に触れても良いぞ」

「目?」

「オマエ、たまにワタシの目が気になってるだろ?」

「……。」


すぐに否定しない辺り予測は当たっているようだ。やがて分かっタと頷く彼へ近付き然程身長は変わらないがほら、と僅かに屈む。

ミスティオはじっと閉じられたティアラの瞼を見つめ目が合うのを待っている。察したティアラは静かに瞼を開いた。


彼女にとって瞼を閉じようが開こうが見える世界は変わらない。だが、ミスティオにとって彼女の瞳をしっかりと見るのはこれがはじめてだった。

漆黒の瞳は鏡のようにミスティオの姿を映すが瞳孔が揺らぐ気配は無く。


「……もしかして、目…見えてなイ…?」

「ああ。実はオマエ達の姿も予言で見える時があるだけで、しっかりとは見えていないんだよ。びっくりしたか?」

「…びっくりしタ」


ぺたりとミスティオはティアラの頬に触れ、瞳をじっと見つめ続ける。彼は何を思い、感じているのだろうか。


「今オマエがどんな表情をしているのか当ててみようか?同情してるだろ」

「ち、違ウ。…憐みじゃなイ、これは…その…」

「ふふ、良いんだ。オマエは悪くないよ」


あまりにも愛しく撫でてくれるものだからな、と茶化せばミスティオはむ…と拗ね始める。彼はまだ青年というには若く純粋だ。

少年の様子に柔らかく目を細めるとティアラは触れられたミスティオの手を包み込むように手で触れ歴史を辿るように話し始める。


「いいか、ミスティオよ。大切な友がいるのなら、愛する者がいるのなら、そんな今を大事に生きろ。世界は広く案外情深く、世知辛い。ましてやオマエはまだ若いだろ?此処に縛られる必要もないんだぞ」


そう言うとかつての友を思い返し懐かしむ様子でティアラはミスティオの頭をポンと撫でる。ミスティオはしばらく下を向いていたが、やがて顔を上げると真っ直ぐな声のトーンで返答する。


「俺は案外、この場所を気に入っていル。…太陽の話は、難しいガ」

「…ふは、そうか。なら好きなだけいるといい。そうだな…盲目なワタシの為に少しはオマエの事を話してくれると良いんだがな。なあ、ミスティオ?」

「………。努力はすル…。…それに」

「それに?」


「俺だけじゃない、他のみんなの事も話すかラ。…預言者じゃ分からない部分、沢山」


初対面の時は全く喋る事が出来なかったミスティオは今、広場やこの世界のポケモン達と接する事で少しずつ成長している。

彼の姿にティアラは微笑むとそれは楽しみだと太陽を眺めながら答えた。

 
 

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