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リグフロリグ 静まらない夜

  • 4月14日
  • 読了時間: 4分

「なんだアイツ」


まずポロリと口から出た一言。その言葉は余計な家具も置かれていないシンプルな彼の部屋の中で虚しく呟かれたものだ。

着信拒否された挙句一つも反応を示さない画面を睨む彼フロウは不機嫌そうな顔でぶっきらぼうにスマホ操作を止めベッドの上に放り投げ捨てる。基本自主的にこういった事をしないフロウからすれば何件かメールを送ってやっただけ感謝してほしいものだと内心思う。フロウはそのままベッドの上にだらんと転がり目を瞑る。


どうせ着信拒否したのもギャンブル精神でストレス発散のごとくあの脳筋焼き鳥と純白のマントを真っ赤に染めながら"悪者退治"でもしているのだろう。どっちが悪者なんだか。

それとも先日の事を気にしているのだろうか。


先日、絶賛着信拒否中ことリグが誤って毒を飲んでしまったらしくツヴァイが慌てた様子でどくタイプのフロウへ助けを求めてきた。しかもリグが口付けを要求し、コイツなら放置しても大して問題ないだろうと言い捨てるもツヴァイが落ち着かない様子でリグへ解毒というか薄めようと思ったのかパンケーキを食べさせようとしていて流石に止めたのだ。

このままだと埒が明かない上に隣で二人揃って騒がれても後々が面倒である為、渋々毒を取り除くという依頼を引き受けた。


そしてさっさと終わらせようと身を寄せ乱暴に口付けたのだが。違和感を覚えたのは割と序盤からで、毒を浴びた割に元気そうなリグは余裕な表情で身を任せていたがフロウは眉を寄せる。コイツ、毒が効いていない。

毒を飲んだ証拠として舌同士を絡めた時毒の独特な味覚やぴり…としたものは伝わっていた。唾液からも多少の毒気がある事も確認出来た。しかしその毒はかなり強いものでどくタイプや耐性のある者以外が飲めばその場で倒れるほどではないだろうかと考える。


視線がぱちりと合う。ゆるりとリグの目元が笑った気がして気に食わないフロウは唇を離しごし…と袖口で口元を拭き舌打ちする。目の前で拒絶したという彼なりの嫌がらせだろうか。しかしリグは気にした様子も無くさらっと報酬の話題に移った。

因みにその一連を目を輝かせながら見ていたポケモンが一匹いる。ツヴァイだ。彼女はフロウへ感謝の言葉を述べリグへ体はもう平気か聞いていた。一応フロウとツヴァイは恋仲なのだがこの一連に彼女は特に思う事はないらしい。


…と、ここまで回想して彼がそんな"些細な事"を気にするはずがないと判断したフロウは何故かどっと疲れが出て先日の件を考える事を止めた。


リグという男は割と面倒な男だとフロウは思う。

人…ポケモンのあらゆる事には好奇心が勝るのかズカズカと土足で踏み荒らし笑ってひらりひらりと逃亡するが、いざ自分の事になるとまるで己が存在していないかのように"他人"を振る舞う。彼の笑みはあくまでビジネスであり、必要最低限に常識人であろうとはする。…が、フロウから見ると一致してなければ本人も望んでいないように見える。読めない彼に振り回される者は少なくないだろう。

しかしフロウは時々感じていた。彼の刺激を求める事以上の空っぽな虚無を。

あれは、「寂しさ」と言っていいものなのだろうか。今のフロウに確信は無い。正直とある事件に巻き込まれ口付け以上の事をする羽目になった過去があるが、彼への仕返しとして土足で踏み荒らす事はまだ出来ていない関係なのだ。

……まだ?

いいや必要ないね。深入りをするつもりはない。


再度内心舌打ちしつつも閉じていた瞼を開きふと小さなテーブルの上に置かれたゲーム機と駄菓子類を見る。これは全て彼が勝手に予定を立て勝手に事前に置いていった産物だ。気付けばリグだけでなく部屋には自分のものではない物が増えた気がする。物置き場じゃねえんだぞ此処は。


晴れない心にイラつきながらも明かりを消す。そもそも何故腹を立てているのだろうか。その答えもフロウは答えられない。答えてやらない。答える気もない。



頭の隅でガラル地方の治安が一部悪化していると最近聞いた情報を思い出す。

フロウは目を細める。今日は悪夢を見るのだろう。

 
 

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