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本編SECOND/レオララ①異変編

ラララ

「これでヨシ、と。もう一人で彷徨いたら駄目ですよ。良いですネ?」


子ども

「ありがとうおねーちゃん!」


ラララ

「誰がオネーさんダ」


デストロくんがファラグと遭遇している一方。

迷子になっていた子どもがテロ組織に巻き込まれそうになっていた為救出したのち暴れた欠損者達をレオンくんと共に一通り縛り上げたラララ。子どもを家族の元へ届けレオンくんへ振り返ると彼はユニオンが回収するまでの間欠損者の監視とバラバラに砕けた黒曜石をじ、と見ている。


ラララ

(あの石…この世界にあるクリスタルとは違う…?欠損者の暴れ方にも違和感がありましたシ…)


「レオンサン、そっちは終わりましタ?朝から呆けてないでキビキビ働きやがれくださいな」


レオン

「…おや、其方は片付いたのですか。お姉さん?」


協力者となった商人の呼び掛けに、クローヴィスは不敵な笑みで返す。

しかしその脳内では、近頃不可解な能力を使う欠損者が増えている現状や、この不気味な程に黒い石について様々な仮説を立てていた。


レオン

(欠損者が使うあの力…キキュイさんが反応を示さないということは、エネルギー源がクリスタルエネルギーでは無いということ…)


この黒い鉱石については既にUNIONでの分析が始まっているが、数週間経過しても何の知らせもない辺り、大した進歩も無いのだろう。


レオン

「……ラララさん。貴方、鉱石については少なくとも私より詳しいですよね?心当たりはありませんか?」


ラララ

「お口を魔法の糸で縫って差し上げましょうカ?……キキュイサンは反応してナイんです?」


心底嫌そうな顔をした後にラララはバラバラになった黒い石の欠片を拾い上げ観察する。


ラララ

「わたくしの世界でこういった仕組みの宝石は確かに存在しますガ、見る限り同じモノではないようでス。どちらかというとエデン大陸にあるクリスタルに近い性質かト」


そうしてラララは手に持った黒い石に少しだけ魔力を込めると簡単に砂になる。


ラララ

「…クリスタルと同じように加護が掛けられてル。わたくしの魔力はこの世界のものではないノデこれくらいのものでしたら加護をキャンセルし破壊出来そうですが…少なくとも欠損者に制御は難しいでしょウ。何しろ膨大な魔力を送り込まれてるようなモノですシ」


レオン

「ええ、キキュイさんは特には。…クリスタルに近しい、ですか」


レオンは商人の手からサラサラと流れ落ちる砂を横目に、自身も黒い欠片に触れる。触り心地は何の変哲もない固く冷たい鉱石である…という面も確かに彼の言う通り、クリスタルに酷似している。


レオン

「流石は目利きの良い商人ですね。復職として鑑定士にでもなられては?」


軽口を叩きながら、レオンは最近のエデン大陸の状況についてを思考する。彼の言う通りこの漆黒の鉱石により欠損者達に"加護"が与えられているのなら─────


レオン

「パンデモニウムとG・Gを潰せばよい、だなんて簡単な話からは随分と遠ざかっているようで…はぁ…面倒ですよ本当に…」


ラララ

「フフン、どこぞの自称SEAとは違いますかラ」


彼の軽口に上機嫌で上書きする。二人の煽り合いは日常茶飯事のようだ。


ラララ

「簡単な話ならとうの昔に抹消出来てますヨ。世界滅亡と比較されたらぐうの音も出ませんガ、こういったイレギュラーが珍しくなイのはご存知でしょう。…というか、朝早くから職場に呼び出されていたようですけどそれこそ何か関係した話だったんじゃないんでス?」


朝から報告もせず先に職場へと向かうのは珍しい事では無いが、今日は救助隊の集結連絡があった辺り何か知らされた後だと推測しているらしいラララはレオンくんへ問う。


レオン

「おや、イレギュラー第1号が何か言ってますね。幻聴でしょうか?」


今朝の呼び出しについては、救助隊側から守秘義務を言い渡されていた。しかし、隣の彼は自分と同じく例の世界滅亡事件の当事者である。ゆえに、伝えておくべきだとレオンは判断した。


レオン

「今朝の呼びだし内容は、簡潔に言えば────"デストロイヤーの復活"でした。信じられます?彼、ご丁寧に私とそっくりな姿を模して、懲りずにノコノコと帰ってきやがったんですよ。

それとこの黒い石が直接関係しているか否かはわかりかねますが…まぁ何かしらの予兆であることは確かでしょうね」


ラララ

「ハン、わたくしが第1号なら余程この世界はお気楽なお花畑で出来ていたでしょうヨ。………って、エ?……ハ?あのヘタレ天使が?マジで言ってやがりまス?」


レオンくんから明かされる今朝の内容に目を丸くしたのち心底嫌そうな顔をした。少々考える素振りを見せた後再び口を開く。


ラララ

「……敵、と言うには微妙な立ち位置ですが、救助隊やレオンサンの前にわざわざ姿を見せたのは理由があったのでは?あなたさまのその様子だと黒い石の情報は得ていないようですガ」


レオン

「天使?そんなに崇高な存在でしたっけ、アレ」


手に持っていた石を、まるで興味が無くなったとでも言うようにポイと放り投げる。


レオン

「さぁ?私の事が恋しくなって帰ってきたのでは?レオンきゅん〜寂しいよぉ〜ってね、あっはっは!気持ち悪いな!」


そういえば、とレオンは続ける。

この漆黒の鉱石や最近立て続けに起きている"ただの欠損者"達が暴れ出す事件と同じように、解決せねばならぬ問題として思いついたことがあった。


レオン

「奴曰く、"第二のデストロイヤー"が誕生したそうです。おかしいと思いません?それをわざわざ忠告しに来るだなんて、やはりホームシックでは?」


第一のデストロイヤーは人間初心者ではあるがわざわざ敵対した救助隊達と再会してまで誕生祝いを求める者でもないだろう。

第二のデストロイヤー誕生の忠告。それはまた目の前で笑って吐き捨てる彼レオンくんと同じ目に合う者が現れるという事だろうか。それとも彼がまた依代になるのだろうか。


ラララは静かに目を細め続ける。


ラララ

「…第一のデストロイヤーサンはクビになったのでは?人はそれを堕天使と呼ぶそうですヨ」


カイン

「あ!レオン先輩〜!お待たせしました!」


会話の最中で背後から聞き覚えのある声。振り向くと部下を連れたカインが手を振りながらこちらに向かってきていた。レオンくんの報告により欠損者の回収を頼まれたUNION達のご到着のようだ。


レオン

「堕天使?全国の14歳がかかる精神病の話ですか?」


レオンはあまり聞きなれない言葉に顔を顰める。社会を幅広く見てきたレオンがそう感じるのだから、きっとエデン大陸の人間にそういった概念が存在しない可能性は高いだろう。多分。

ふと、聞き覚えのある声がレオンの耳にも入る。


レオン

「カイン。捕らえた彼らを特殊科に運び入れてください。残りはナインが何とかするでしょう」


レオンは暴れて捕らえられた欠損者達を、視線で指し示す。「はい!」とunionの割には良い返事をして、彼は欠損者の方へと足を運んだ。


ラララ

「……?」


捕らえられた欠損者達が運ばれる様子を眺めていると、ふと遠くから二つの影が近付いてきている事に気が付き顔を上げる。こちらからでは遠過ぎてまだ姿までの確認は取れないが、少なくともUNIONを特徴とする制服姿では無い事は把握出来た。


ラララ

「…レオンサン、二人こちらに向かってるようですが知り合いですカ?」


レオン

「…いえ、知り合いでは無さそうで…………」


レオンは目を細めて、その存在を分析しようとする。よくよく見れば、なんだか見た事のあるような外見。例えば出かける前に鏡で見たり、街を歩いている時に通り過ぎたショーケースに写っていたりする、存在。


ピッ

ツー、ツー、


レオン

「こちらクローヴィス。ライム、狙撃の許可を。安心してください。一撃で仕留めます」


ラララ

「チョット!気持ちは分かりますが此処で死人を出さないでくださいまス…!?わたくしが!後始末が面倒なのデ!!」


即座に上司に連絡を入れるレオンくんをあくまで自分の為に止めようとする商人はもちろんデストロくんの安否は気にも止めて無い様子。


レオン

「聞いてますかレオンさ──────」


しかし隣に立つ人物を見た瞬間ラララは目を見開き言葉を失った。


レオン

「全く…お優しい商人さんなことで」


毛頭撃つ気は無かったので、構えたライフルを下ろすと同時に立ち上がる。

ふと、レオンを制止した男の声が聞こえないことに違和感を覚えた。


レオン

「………………?どうしました」


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