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本編SECOND/ライルカ①Prologueルカサイド編

▶時系列

デストロくんがファラグの手により人質に取られendの天界へ

のち和解

デストロくんに光の加護を与えるべく名を授ける間、エデン大陸ではテロ組織や第二のデストロイヤーによる襲撃を受けておりやや押され気味である

───────────────








N

「よ。お呼びかい?大将」


此処は天界。

神様や天使様がいる世界。

自由に日光浴をする自然達や鳥のさえずりに囲まれた天界の中心部に存在する白ベースの世界遺産レベルも超える建築"ヘブン"creation of heaven。

各世界を見据える巨大なムルクの鏡があるロビーにReisetu世界の統治神ファラグ・テインが立っていた。彼は背後から声を掛けられ振り返る。


ファラグ

「おお!流石は創造神さん、早かったですな」


声を掛けた創造神Nは軽く両肩をすくめ合図して見せる。


ファラグ

「エデン大陸の形勢はいかがですか?」


N「いかがも何も大体把握してるんだろ?」


ファラグ

「監視よりも実際に踏み入れた方の意見が明確でしょうからね」


チラリとムルクの鏡を見ながら答える。鏡は今異世界であるエデン大陸の景色を水面のように映していた。


N

「ご存知の通り敵の数が多くてやや押され気味だな。生憎欠損者は能力開花に慣れていない人達が占領してるしある意味まだ救いがあるかもしれないが。ほぼ操作している猫兵器ちゃんの成績で、彼女を救助隊がどうするかで方針も変わるだろう」


ファラグ

「ふむ。やはり人手不足になると行動にも制限が掛かってきますな。長期戦になれば不利になるでしょう」


N

「で、どうするんだ?」


ファラグ

「今、デストロくんにはエデン大陸に帰還する準備に取り掛かってもらっています。何やら私に話もあるようですしもう少々時間が必要です。…そこで」


一呼吸置きいつもの声のトーンで指示を出す。


ファラグ

「Nさん。貴方に召喚魔術による増援を許可します」


ノイズ

「ハア!?増援だと!?!?」


急に横槍が入ったかと思えばかなりの声量に神様達の会話を聞いていた小鳥や鹿など一部の動物たちが驚き逃げていく。いつの間に盗み聞きしていたのかはたまたNのそばに始めからいたのか、大声を上げた破壊神ノイズは眉間にしわを寄せている。延々と続く広すぎるロビーである為彼の声はどこまでもエコーする。

ファラグとNは慣れているのか特に気にした様子もなく会話を続けた。


ファラグ

「おや破壊神くん、聞くなら私の下までおいでなさいな」


ノイズ

「増援なら俺様に向かわせろ!」


N

「きみは留守番」


ノイズ

「そっそんなN様…!俺様はお役に立てないとでもおっしゃるので…!?」


N

「んー、破壊神が向かって大陸を壊されちゃ後始末が大変そうだしなあ」


ノイズ

「ゔっ……そ、それは……」


ファラグ

「おお、もしや今のはブラックジョークというものですかな?」


ノイズ

「うるせえちげーますよ!!」


N

「言葉遣い言葉遣い」


Nは鏡に映る忙しく活動するfirefeather救助隊達を眺めながら一人の少年を思い浮かべる。


N

「一人は既に救助隊の援護をしてもらっているが、指定はあるか?」


ファラグ

「シャフくんの他に比較的戦闘慣れした長寿の方が良いでしょう。デストロくんによれば不死身の方もいるのだとか」


ノイズ

「………」


N

「シャフの事が気になるか?」


ノイズ

「!い、いえ!」


ノイズは鏡で救助隊メンバーの一人ウェンくんと楽しげに話す少年シャフを懐かしげに見ているようだった。慌てて目を逸らす彼にNはフ、と笑う。


N

「不死身っていうと棺桶背負ってた子だな。…彼を主軸に考えるか?」


ファラグ

「不死身と言えど彼はまだ青年です。敵陣の数が未だ増え続けている中単独行動させるのは危険でしょう。操り人形にされてはそれこそ処理に時間を催しますしね」


ふむ、とファラグは手を顎に添え考える素振りを見せる。


ファラグ

「救助隊の他に団体の戦力はありますか?」


N

「スパイくんが所属する警察部隊がある」


ファラグ

「ではそちらとも連携を取りましょう。契約期間は任せます。最適者に心当たりは?」


N

「………二人いるな」


ファラグ

「素晴らしい、上出来ですぞ!」


ニッコリと笑うファラグ。

次にカタンと無機質な靴音が聞こえた方向へ振り返ると控えめな様子でデストロイヤーくんが立っていた。後光が差し、太陽の光でキラキラと照らされる銀髪は美しく、その姿はまるで舞い降りた天使様そのものだった。彼の背後では死神説実と再生神セリアが配下のように黙って控えている。


ファラグ

「おや、デストロくんの準備が済んだようです。では後の事は任せました」


N

「はいはい。フェアリーくんとは和解出来たのか?」


ファラグ

「もちろん!これは私の過信やもしれませんが最初に対面した時よりも表情が穏やかになった気がしているのです。私の愛が伝わったのかもしれませんぞ!」


ノイズ

「ぜってー勘違いしてると思いやがりますよ」


N

「どうだかなあ。楽しそうで何よりだ」


ファラグ

「ふふ、やる事を消化次第私達もエデン大陸に向かいますのでそれまでご武運を」


ノイズ

「ハッ、どうせ貧弱天使とカツ丼食べたいだけでしょう」


N

「フェアリーくんの事が心配なら素直に言うのが吉だぜ?着替え中に彼の部屋の外でウロウロしてたのは誰かな」


ファラグ

「なんと!デストロくんとそんなにも親しくなったのですね、とても喜ばしい事です!」


ノイズ

「な"…!?しししっ、してません!!違います!!俺様はいかなる時もN様一筋です…!!」


N

「声でか」


デストロイヤーくんの元へ向かう前に足を止めファラグが話した言葉にはいつもよりも熱が込められていた。まるでチェス盤を目の前に己の手の内をかざし闘志を燃やすかのように。


ファラグ

「おっと!お伝えするのを忘れていました!神が姿を現した時は私も自ら動きます。その場合エデン大陸全体に防衛魔術を張ってください。良いですね?」


N

「そうならない事を祈るよ」


そう。

統治神はいよいよチェックメイトを狙いに来るだろう。













─────────



N

『物語に憧れた海の理想を聞かせておくれ。

 どんなおとぎ話?そう、

 彼女の名は"悪の不老不死なき・ヴァンベリー"』

         シーメルヘンワールド

       -Sea Märchen world-



ファラグがデストロイヤーくんと共に姿を消した後、Nは透明な巨大紋章を地に描き詠唱に魔力を込める。何重にも魔法陣が重なりNの足元から離れガラスのように砕かれる。

バリンと粉々になる魔法陣の粒達で遮られていた対象者の姿が見え始める。

パラパラと消えていく召喚魔術から姿を現したのは一人の少女─────なき・ヴァンベリーは何故か咳き込んでいた。


なき

「───っげほ、ゴホ!呼ぶならもうちょっとタイミングを考えてくれないか!後少しで新記録だったんだけどな」


N

「何してたんだ?」


なき

「タンポポでヒゲ作れるか試してた」


ノイズ

「暇を持て余しすぎだろ!!」


なきは不老不死である為もはや時間の使い方は自由奔放であった。


なき

「って、あれ?…神様に呼ばれたって事はもしかしなくても大事件?」


N

「んー。そうと言われればそうかもな」


ノイズ

「ただの増援だっつーの。さっさと行って来い」


なき

「ただ事じゃなさそうだなー…また砂漠とかに放り出さないでくれよ?干乾びるからな!」


N

「エデン大陸次第だな。労働内容は移動しながら話す」


なき

「はいよ。んじゃ、手繋ごっか」


ノイズ

「N様と手を繋ぐなんて羨ま…変な事考えんじゃねーぞ」


なき

「良いだろ〜〜ほれほれ」


ノイズ

「ぐぬぬ…!」


N

「遊ばれてるぞ、きみ」


Nはどのような場所でもすり抜けられるらしく、人を連れて行くにはこうして手を繋ぐなど肌を接触させる必要があった。ノイズが今回同行せず悔しがるのは本能的に分かっているのだろう、なきはNの手を繋いだままプラプラと手を振り見せびらかす。

最初は今にも飛び掛りそうな勢いの睨み付けっぷりだったが、なんとか留まり気を改め直す。


ノイズ

「……N様。本当に危機的状況の時は俺様も向かいますから」


N

「心配性だな。きみはこの世界を頼むよ」


ノイズ

「お気を付けて」









───────────








なき

「此処がUNION?」


ノイズと会話を交わして数十分も経たない内にエデン大陸のコンケット地区とバイオ地区の境界線、つまり大陸の中央に位置する見上げる程の高層ビルに辿り着く。

エデン大陸の平和と秩序を守る私営警察組織UNION。Nは此処の頭との交渉を目的になきと共に訪れていた。


N

「ああ。大将によると今は本拠地にいると聞いたらしいから、とりあえず会いに行くか」


なき

「内容は大体聞いたから分かるけどさ、そう簡単に上官の面会を許すかね」


N

「とっておきがある」


なき

「それは?」


N

「カツ丼提供屋のスパイくん」


なき

「美味そうなスパイだな。スパイスの事か?」


Nはなきと手を繋いだまま建物の中へと入る。すると次の瞬間二人が辿り着いたのはUNIONの玄関ではなく、ファイルが壁一面に広がる事務部屋。並べられたデスク。無機質なPCからは機械の音が聞こえる。

此処は諜報科と呼ばれる場所。そこにNが言うとっておきの人物がいた。






N

「スパイス屋のスパイくんいる?」

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