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本編FIRST/レオララ②出会い編

更新日:3 時間前

ラララ

「またのお越しヲ〜!」


ラララが取り扱うジャンルは薬に装備品など幅広くお客からの評価は高めです。特に裏で生きる人達には都合のよい代物が多い。白状薬、麻薬、媚薬、暗殺用道具などもある。頼まれる内容によってはもれなくドン引きな目で対応する。

そんな怪しいお客にも接客し頬に傷を負い荒らされた商品達を整頓するラララはレオンくんの存在に気付く。


ラララ

「ったくこれだから価値の分からない奴らは嫌いなんダ。ああもうこの材料も貴重なのに……ん?いつぞやのお客サンじゃないですか。見ての通り本日はお店閉まってますヨ」


レオン

「これはこれは、悪徳商人さん。見るからに何だかお忙しいみたいですが…合法な商業であれば営業妨害の罪で裁けるのですが────生憎、法は善人を守るための存在ですから」


再び闇市に足を運んだレオンは、開口一番つらつらと皮肉を並べた。


ラララ

「たまにいるんですよねえ、高いだの詐欺だの言って店を荒らしたり身に着けているモンを引っ剥がして高値で売ろうとする輩が。……って、ンン?悪徳商人だなんて人聞きの悪い!お客サンとは正式に取引が完了したはずですのに貴方様までそんな事言うのですカ?しくしく」


苦情を入れられてわざとらしくよよよと泣き真似をするラララ。どうやら何の苦情なのかまだ分かっていない様子。


レオン

「監視の目が届かぬ闇市なんて混沌そのものですよ。わかりきった話でしょう?悪に危険は付き物、諦めてください。

おや、私が貴方から購入したものなど1つしかありませんよね?あの飴玉ですよ。結局、何も起こりやしないじゃないですか。金を返せと言うつもりはありませんが、パチモンを売りつけているのなら容赦なくシバいてやろうと思いましてね」


闇市で買った如何にも嘘っぽい商品なんぞ無論信じてはいなかった。が、それはそれとして詐欺を見つけたのならば法的に処置せねばならぬのがユニオン…すなわち警察の役目である。


仕方なし…と言わんばかりにレオンはため息を付くと、手錠をちゃりちゃりと見せつつ微笑みかけた。


ラララ

「何も起こらない?おかしいですネ…パチモンをお渡しした覚えはないのですケド」


ぱ、と泣き真似を止めレオンくんの目の前まで近付き顔をじっと見る。


ラララ

「ンー…?お客サン、まさか消えてほしい対象が違った…なんて事あったりします?」


レオンくんは真面目にお金を支払ってくれたお客さんなのでそれなりの品物を用意してるはず。


レオン

「間違える?私が?……パチモンキャンディに縋ってまで消えて欲しい存在など、彼奴以外には思い当たりませんが……


まぁ良いです。仮にこの飴の効果が本物だったとしても、実体化出来ない彼に効くかはわからなかったので」

レオンは少し悩んだ様子を見せるも、割り切ったように首を横に振る。


ラララ

「失礼なお客サンですねえ…マアあの飴は即効薬じゃないですしもう少し続けてみましょう?わたくし今のところ逃げも隠れもしないのデ」


しばらく眺めたのちス…と離れると傷付いた自身の頬を魔法で治癒しながら話す。


ラララ

「飴がなくなったら追加料金払ってもらえれば新しくお渡ししますヨ♡」


レオン

「怪しいダイエットサプリの宣伝みたいな言い方ですね?まぁ即効性があるのならそれはそれで、何処かしらで不都合が発生しそうで恐ろしいですが。─────わかりました、貴方の言葉を信じましょう。特に失うものもありませんしね」


そう、今のレオンに失うものは何一つ無い。


ラララ

「…えらく素直に聞いちゃってまあ…最近の警察官って皆目が死んでるんでス?あなた方のような立場の者が無敵を名乗る奴らと同じ顔をしては世も末ですネ。それほど“此処も希望も無い所“って事でしょうけど。…同情しますヨ」

「そうだ、お客サン。この辺りで紫の長髪で耳の尖った男性を見かけませんでした?わたくしよりも長身で研究員のお方なのですガ…」


警察ならあるないの情報は持っているだろうと思いつつエデン大陸に来て間もないのもありこの世界の現状を聞こうとする。


レオン

「希望?ああ、そういうことでしたら。この世界─────77回目のエデン大陸は"希望"と可能性に満ち溢れています。そして、私はその"希望"の一つ。…どうです?"希望"を目にした気分は」


そう、これは皮肉でしかない。世界にとっての希望は、レオンにとっての絶望であるから。


レオン

「はぁ…長身で尖った耳を持つ長髪の研究員、ですか?知りませんね。生憎、パトロールは私の仕事ではありませんので。ユニオンに捜索願を出すか…酒場にでも行ってみたらどうです?そのご自慢の口と交渉術で、何か聞き出せるかもしれませんよ」


ラララ

「ハ?…ゴホン。生気のないお客サンが希望の象徴と言われましても特に思う事はありませんネエ…。あ、大切なお客サンではありますヨ!」

「そうですか…残念デス。わたくし名も無き商人の立場ですのであなた方のような者が集まる場に足を赴くのは御免被りますネ。酒場は此処に来る前にいくつか回りましたよ。なあんにも情報はありませんでしたケド」


少し寂しげな声色で遠くを見つめた後はいつもの調子で首を傾げながら問いかける。


ラララ

「知らないなら気にしないでくださいな。…さて。まだ何かご用デ?見ての通りわたくし今道具の整頓で忙しいので手短にお願いしますヨ」

「成程、絶望に打ちひしがれたとしても貴方の世界を動かすのは金なのですね。まぁ、がめつくないと商人なんぞやっていけないのでしょうが………」


レオンは再び上司の顔を思い浮かべながら、そんなことをボヤく。そして彼の問いに首を振った。


レオン

「いえ、特には。用事というか…例の飴の効果を貴方に問いただそうと足を運んで見たら、なんだか大変そうなことになっていたので興味本位で」


ラララ

「…何なんです?77回目の世界って。まさか本当に世界が77回創られたなんて言いませんよネ?」


レオンくんの言葉には返答せずに問いかける。


ラララ

「良い趣味をお持ちデ。見学ついでに手伝ってくれても良いのですヨ?警察が盗っ人にならないよう見張ってあげますので。その気がないなら話は終わりデス。出直して来なさいナ♪」


レオン

「厳密に述べるなら、壊されたのは76回、創られたのは77回…になりますね。…………貴方、先程から思ってましたけど何処か異国から来られたのでしょう?この伝説は此処、エデン大陸では有名ですので。もしや、その研究員の方を探して此処まで?」


そんなことを問いかけながら、レオンは職人の足元に転がる荷物を眺めた。


レオン

「はぁ……良いですよ。貴方、なんか貧弱そうですし。警官としても救助隊としても困ってる人は助けねばならないので。手伝ってあげます。で、何を運べば良いですか?」


ラララ

「創られた…これは盲点でしタ!なんとも不思議な伝説で。スミマセンねえ〜わたくし名も無き小さな跡地の生き残りですので常識に疎いのデス。そりゃあもう警察も忘れるような貧しい出身地でして…マアそんなことよりモ!」

「お察しの通りあちらこちらと長年探しておりますがまともな情報さえ見つからない始末でス。今頃何処で何をしているのでしょうねえ…。……あ!手伝ってくれるのでしたらそこの荷物を此処の棚の上まで運んでくださいナ。いやあか弱いわたくしに手を伸ばしていただき助かりマスよ〜警察や救助隊さまさまですネ♡」


レオン

「跡地の生き残り…そういえば最近、森の先住民が全員惨殺されて焼却までされた事件がありましたが………貴方、もしや何かご存知ですか?お、思い出せる範囲で良いので!警察としても泣き寝入りは出来ないんですよ!」


ふと、記憶の片隅に思い浮かんだのは犯人が特定出来ずに先送りになっていた火事の件。森は灼熱の炎に焼かれ、その森に住んでいた民族達の姿は確認出来なかった。これは数年経った現在でもなお、解決出来ていない未解決事件の一つである。


レオン

「そんな話を聞かされては警察として探し出したい気もしますが…でもこの大陸にいるか否かも定かで無いのでしょう?ああこれですか、よいしょっと。…これでよろしいでしょうか?…まぁ警察の役割は人助けじゃないですから。今の私の行動は"救助隊"のものだと思っていただいて」


ラララ

「えっ。…あ、ああ!確かに最近そういった話をお客サンがしていた気がしまス。ですが、残念ながらわたくしはその住民ではありませんし詳しい内容はお伺い出来ませんでしたが…また機会がありましたら聞いておきますヨ」


もちろん捏造話なので若干冷や汗をかく商人である。


ラララ

「おや…フフ。心配してくださるのデ?最初はどんなヤバい警官かと思いましたがお客サンって案外優しいのですネ。ハイ、それです。あとは…ーーー!いった、」


目を丸くした後クスクス笑いながら荷物を指示していると慣れない場所で足場を崩しレオンくんへもたれ掛かった。


レオン

「はぁ…そうでしたか。ゴホン…それは失礼。まぁでも、貴方の故郷も何かしらあったと言うことですよね?他人の過去を追求するのは不躾だと存じておりますが…事件の追求は正義の追求。何かあれば、まずはユニオンに連絡を。明るみに出ていない事件、今からでも遅くはありませんので」


などと正義を説いている間に、目の前で起きた惨事にレオンは目をぱちぱちとさせ驚く。


レオン

「おや、大丈夫ですか?…気をつけてください。貴方、旅商人でしょう?何故ヒールなんて履いてるんですか。盗人に襲われた際に蹴りでも入れるつもりで?良い蹴りが出そうですね」


ラララ

「お言葉だけいただいておきますヨ。故郷の行く末なんて微塵も興味ありませんから。ですがこのラララが必要な時は是非お呼びくださいナ!武器なりなんなりあらゆる品物をお安くご用意して差し上げましょう」

「ハハハ…一つ借りが出来てしまいましたネ。…ヨ、と。んー、だってその方が足が綺麗に見えるデしょう?商人見映えも大事ですから。そんな野蛮な事出来ませんよお〜まあ確かに今回はご覧の通りの結果となりましたが…いつもだったらちゃあんと”お帰りいただける”のですヨ?」


レオン

「はぁ。そうですか。武器は要りませんので、特に貴方を呼ぶことは無いでしょうね。……例の薬があるのなら話は別ですがね。

にしても貴方、警察…いえ、救助隊相手に借りもクソも無いですよ。それが私達の仕事なんですから。女性がヒールを履くのは足が細く長く見えるからだと言いますけど…良いんですか?そんなに綺麗にして、寄せ付けるのは花に群がる薄汚い小虫…なんてことにはならないように、用心してくださいね?」


ラララ

「フフン。お薬だってありますからネ。今は効果が期待出来ていないようですが後に分かりますヨ、きっと」

「エ〜世の中借りを作れば警察だろうがろくでもない要求をする奴等はいマすし…あなたさまは仕事を真っ当する精神をお持ちのようで素晴らしいですネ!この通り助かっています。…ですガ流石にこの量は埒が明かないですネ…。……ハア…仕方ない」


ピ、と人差し指を指揮者のようにひらりとさせれば散らばった薬品や荷物達が宙に浮き片付いていく。


ラララ

「お客サン、そこの荷物を隣の隙間に入れてもらったら今日はもう帰っていただいて良いですヨ。夜遅くまで付き合わせてスミマセンねえ。…そうダ。先程の話ですが花に群がる薄汚い小虫、というのは心当たりが御座います。羽虫も小虫も本当に美しい花を知るはずも無いですのにね。群がる先は毒でしかない。哀れな話ですヨ」


一呼吸置いて意地悪く笑う。


ラララ

「ご忠告ドウモ」


レオン

「そう言ってサブスクリプション的な感じで購入させるのでしょう?ええ、存じております。商売人が競う相手は同じ商売人では無く詐欺罪であると…」


ブツブツと呟きながらも、なんとなく男の動きをおっていたレオンは再び驚きで目を丸くする。


レオン

「警察ですよ?常に法に縛られているんですよ、私達は。私情で違反を働けばクビですからね

…………貴方、二重能力者ですか?先ほど傷も直していたでしょう?それとも………いえ、なんでも」


ラララ

「詐欺だなんてあんまりですお客サン!それに購入させるのでハなく快く快適に購入していただくのですヨ。競えるお相手など何処にいましょうカ」

「ワ〜真面目サンですねエ…お言葉ですが皆が皆あなたさまと同じ善き行いをしているとは限らないと思いますヨ?例え法に縛られていようがニンゲン欲に弱いですから知恵を使えばいくらでも…まあ、この話は良いでしょウ」

「…ハイ。回復魔法と風魔法を扱えまス。それが何か?」


レオン

「……魔法?随分とファンタジーな表現をするんですね。エレメント能力を魔法と称す方は初めて見ました。とはいえ…確かに貴方は外見も現実離れしたものをお持ちですしね。最近の商人は劇団に出られたりもするんですか?」


ラララ

「エ?今時魔法呼びも珍しくないですヨ?他のお客サンからの指摘もありませんでしたしこの際呼び方は大して重要ではないのでしょうネ。それにロマンがあって良いでしょう?…というかお客サンって警察の中でも上官だったりしまス?対応も新人っぽくないですし…手伝ってくださったお礼に一つ忠告でス。職柄上とはいえあんまりしつこい男は嫌われますヨ」

「…よいしょ、と。フム…こんなものですネ。ではデハわたくしはこれから食事なのデ。閉店ですヨ〜」


レオン

「流石に魔法と称すのは初耳ですが…特に貴方から言及が無いということは、方言でも無いのでしょう?まぁなんというか…流石に大の男の口から魔法は……その………

……ごほん。閉店も何も、最初から開店して無かったと思いますが。手伝いへの見返りはいらないと言ったでしょう。どうしても借りを残すのが嫌だというのなら、お節介は不要なので次回にサービス券でもつけてくださいよ」




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