本編FIRST/レオララ➄ラララサイド編
- reisetu
- 1月2日
- 読了時間: 5分
更新日:3 時間前
リアン
(………声が途切れた。もう大丈夫かナ)
救助隊を名乗る者達の声が完全に消えたところでラララは身を隠すのを止め辺りを見渡す。
リアン
「ウワ…」
そうして散らばるテロ組織の惨状とこびりつく鉄の匂いに眉を寄せる。とてもじゃないが一般市民に見せていいものではない事は確かである。
リアン
(確かに酷い有り様…警官もエグいことしますねエ。…話を聞く限りあのヒト達が救助隊で間違いなさそうですし、警官が言っていた事は本当でしたガ…)
他に生き残っている人達はいないか確認しながら思考を巡らせる。
リアン
(他の隊員…特にあのトトとか言うヒトと随分と仲が悪いようダ。チームワークもバラバラ。対処法といいとても救助隊を名乗る人達とは思えませんネ。残りのテロ組織の人達は撤退したようですしわたくしもこれ以上魔法を使用せずに済んだので助かりましたけど)
「…レオン、か」
ぽつりと口に出たのはあの警官の名。手を口元に当て考えを続ける。
リアン
(確かお客サンの要望は悪霊を殺すコト。飴の件とは関係無い?仲間と上手くいっていない事が原因で精神的な支障が出た、とか)
新人警察
「ーーーそこの方!大丈夫ですか!?」
リアン
「!」
暗闇の向こう側からこちらへ走ってきたのはあのレオンとかいう警官と同じ制服を着こなす人達だった。警官らはこちらの状況を見るなりぎょっとした顔になる。そして救護班と思われる者達へ指示を出し一部の人達が先に飲食店内へ入っていった。
新人警察
「いつも以上に酷いな…出遅れてしまった…」
リアン
「…もしかして、警察のお方ですか?」
カイン
「あ、はい!ユニオンより警備課のカインと申します。遅れて申し訳ございません、爆撃により通行が一部遮断した為こちらまで出向くのが遅れてしまいました」
リアン
「わたしは大丈夫です。それよりも飲食店の中に負傷した人達がいますのでそちらの救助をお願いします」
カイン
「分かりました。今救護班が向かっているので貴方も共に来てください。此処での単独行動は危険ですから」
リアン
「あ…いえ、わたしは」
断りを入れようとしたところで担架を担いだ救護班が店から出て来た。横になっていたのは店長の妻で隣に店長がついてきている状態で、ふと目が合い立ち止まる。
「「………」」
リアン
「……わたしはこちらの方々とは関係ありませんので。これで失礼します」
カイン
「えっ、ちょっとーーー」
店長
「待て」
店長はラララを呼び止めるとバツが悪そうな顔をしたのち
店長
「……明日も此処に来い」
リアン
「え、」
店長
「この有り様だ、まずは建物の修復活動からになるがな。バイト代に変更は無い。良いな?たんまり働いてもらうから逃げるんじゃねえぞ」
リアン
「……わたしは貴方達を騙したのですよ?」
店長
「さあて何の話やら。今日はもう疲れた。さっさと帰った!」
リアン
「っ!?」
カイン
「よく分かりませんが…とにかく彼は帰宅されるのですよね?私が送ります!」
店長
「お願いします」
リアン
「…………。」
背中をバシッと叩かれ更に外へと追い出される彼を店長が見送る。その目に見つめられるのが居心地悪くなったラララは渋々一礼し警官の後に続いた。
…………。
リアン
(……クビになると思っていたのに。分からないナ)
カイン
「あそこのお店って最近話題になっていた飲食店ですよね?修復が終えたら私も食べに行きたいです。……ええと」
リアン
「……リアンと申します。カインさん、この辺りで宿泊可能な場所はありますか?実はわたし帰る場所が無いものでして」
カイン
「え!そうなんですか?一体今までどうやって過ごしてきたんです…?」
カイン警官に店長に拾われバイトと宿泊までお世話になっていた事、盗難時に行方不明になった兄を探している事を話す。
カイン
「なるほど…それでしたら緊急宿泊が出来るホテルをご案内しますね。救助隊の本拠地も近くにあることですし、警備も比較的行き届いている大きな場所なので安全面も保証出来ます」
リアン
(なるべくユニオンや救助隊の近くは避けたいのですケド……断ると怪しまれるし仕方無いカ)
リアン
「…はい。よろしくお願いします」
カイン
「その…お兄さんの件もこちらで捜索しますね。何かあれば是非ユニオンに頼ってください」
リアン
「何から何までありがとうございます。正直、これからどうしようか悩んでいたので助かりました」
カイン
「お安い御用ですよ!………あれ?」
会話を続けながら細道を歩いていると目の前の道が爆撃で揺れたのか土砂崩れで通れなくなっていた。
カイン
「私が来た時はまだこんな事には…参ったな、唯一の近道だったんですけど…」
リアン
「………」
ガゴン!ズズズズ…
カイン警官が呆気に取られている隙に指を後ろで振れば忽ち土砂崩れが元の場所へと移動していき塞がれていた場所が空いた。カイン警官はさらに目を丸くしキョロキョロと辺りを見渡している。
カイン
「え!?ええ!?」
リアン
「……す、凄い…道が元通りになりましたね?警察さんがやったんですか?」(すっとぼけ)
カイン
「いっいえいえいえ!?こんな大層な能力なんて私知りませんし使えませんよ…!な…何がどうなってるんだ…」
リアン
「よく分かりませんがお陰で通れるようになりましたし…夜も遅いので早く進みましょうかね…ちょっと怖いですが…」
カイン
「だ、大丈夫ですよ!私がしっかりホテルまでご案内しますので!………それにしても本当に不思議な事があるもんだ…諜報科なら知ってたりするかな…ブツブツ」
リアン
(……うーん…。今更ですケドこの世界じゃもっと魔法の加減が必要かナ…何か使い方も違うみたいだし……わたくしの力は初級程度ですのにこの騒ぎ様はチョット予想外…)
動揺を隠しきれないカイン警官の背中を見ながら密かに難しい顔をするラララであった。
……………。
カイン
「部屋空いていて良かったですね。此処結構広くて迷いがちなので部屋までご案内しますよ」
リアン
「そこまでお世話になるのは申し訳無いですが…それが貴方がたの仕事なのでしょうし、今夜はお言葉に甘えますね」
カイン
「お安い御用ですよ。ではこちらへ、」
ホテルのロビーからエレベーターに乗り降りをした時だった。
カイン
「ーーーあ!クローヴィス先輩!」
リアン
(ーーーーは)
ラララは一瞬固まった。