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本編FIRST/レオララ③ラララサイド編

更新日:3 時間前

作者:ねここ。

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ラララ

「ハ〜〜〜疲れた…お腹もペコペコ!」


レオンくんが去っていったのを見送った後にぐったりと店のテーブルに突っ伏す。


ラララ

(結局上官なのかは話さなかったナ…救助隊もこの世界じゃ有名なのか?お客サンの様子だと告げ口していないようだし金も持ってそうで都合が良いガ…あのクソ真面目な性格はチョット厄介。話す程この世界の知識が無いこちらの分が悪くなル)


「ひいふうみい……ウーン、ギリ足りますかネ…」


報酬を確認しつつフルグラのような食事を取り始める。


ラララ

(思った以上にこの世界は複雑。明らかに情報が足りナイ。日の当たる場所でバイトでも…警察に絡まれるのはめんどうだし変装してその辺の住民に雇ってもらって…って、此処って教会はあるのカ?手続きや記憶操作魔法ハ…)


「…………変な奴だったナ…」


もぐ、と咀嚼後飲み込みポツリと呟く。



………。




ラララ

「…サテ。明日からまた忙しくなりそうダ」


食べ終えた後荷物を小さくし袋に入れる縮小魔法を使用し店を畳む。手のひらサイズの荷物を懐に入れローブを被り闇市場から立ち去る。








――――――――――――――✄


店員

「リアンさんー!6番テーブルにコレお願い!」


リアン(ラララ)

「ハーイ!」


がやがやと賑わう飲食店で料理を運ぶ男性、リアン。ラララがこの場所で労働する間利用している偽名である。

店長の指示通りテキパキと体を動かしていると背後で食レポの生放送中だったのか一人の女性に声を掛けられる。


女性

「すみません、お時間ありましたら是非この料理について取材させていただきたいのですが」


リアン

「え?わ…わたしですか?その…」


店長

「ごめんなさいねえ、この方此処で働き始めてまだまもないんですよ」


リアン

「あ…店長。キッチンはもう大丈夫なんですか?」


店長

「ああ、お陰様でな。君は裏で一旦休んできてくれ。…待たせてしまって申し訳ない、インタビューなら私が聞きますよ」


女性

「ありがとうございますー!それでこの大変美味な料理に関してなのですが…」


取材を受けながらこちらへウインクしてみせる店長へ笑ってそっと会釈をした後にその場を立ち去る。個室まで訪れると先に休憩していた先輩の一人が笑顔で出迎える。


店員

「さっきのお客さんで今日は終わりだってさ、お疲れ様。いや〜〜新人とは思えない仕事振りでびっくりしたよ!この時間帯めちゃくちゃ混み合う事が多いから助かった〜」


リアン

「フフ、お役に立てたのでしたらよかったです。こんな身寄りのないわたしを拾ってくださった店長達の為に少しでも恩返しがしたいので…」


店員

「お兄さん探してる途中で盗難にあって倒れてたんだって?本当物騒な世の中だわ…何か困ったことがあったらいつでも相談してね!」


リアン

「はい…!みなさん本当に優しく接してくださって感謝しきれません。ありがとうございます」


店員

「も〜〜可愛いこと言っちゃって〜〜このこの〜!」


リアン

「ひゃ〜〜〜っ」


頭をわしゃわしゃした後店員の一人は明るい調子で鞄を持ち帰宅していった。リアンは一人になった途端表情を落としボサついた髪を戻しながら毛先に触れる。


リアン

(…ロルフッテサンの情報も集めたいから兄設定にして髪色も同じにしたけど、もう少し大人しい色が良かったかナ…お客サン達からの視線も結構感じたし…)


「……市場から出てもう三日、カ…」


コンコンとノックの音


リアン

「!ハイ、開いてます」


店長

「リアンくん、今日も沢山動いてくれてありがとう!だが傷はもう平気なのか?」


リアン

「おかげさまですっかり治りましたよ。ありがとうございます」


フェイクだけどネ。


店長

「そりゃ良かった!君が来てくれてから心無しかお客の反応も良くてね。女性客の心を掴むとはお前さんもやるなあ、はっはっは」


リアン

「そ…そうなのですか…?」


店長

「そりゃあもうべっぴんさんが来たってちょっとした話題に…」


店長の妻

「おーいアンタ、あんまりリアンさんを困らせるんじゃないよ!さっさと休ませてやりな!」


店長

「おっと長話してしまってすまないな。今日も疲れただろう。部屋でゆっくり休むと良い」


リアン

「あ…そのことなのですが、傷も癒えましたし今から宿を探そうかと、」


店長

「今からだって…!?」


リアン

「えっ…」


和やかな雰囲気から一瞬にして空気が変わり思わずラララは息詰まる。


店長

「こんな夜中から外に出歩くのは危険だ…此処なら隠れる場所もあるし寝床もある。しばらく泊まっていきなさい」


リアン

「し、しかし先程先輩方が帰っていきましたよ?それに仕事をいただいただけでなく寝床までずっとお世話になるわけには…」


店長

「あいつらは能力者だからな。自分の身は多少守れる人達だ。だが君は欠損者だろう?能力を一つも持っていない状態で人気のない場所を出歩くのは本来自殺行為だ。私達が拾っていなければ兄と同様誘拐でもされてーーー」


店長の妻

「アンタ!…お兄さんを探してる途中で襲われたのでしょう?テロ組織に巻き込まれたら大変だわ。私達は心配しているんだ」


リアン

(能力者…はあの警察が言っていた事カ。それにしても欠損者?テロ組織?一体何から隠れるって?……イヤな予感がするナ)


リアン

「…すみません。大変申し上げにくいのですがどうやら盗難にあい負傷した衝撃で一部記憶が曖昧になっているようなのです。今この大陸がどうなっているのか、とか」


店長の妻

「まあなんてこと!」


リアン

「わたしは兄と再会するためにも記憶を再度呼び起こす必要があると思っています。出来ることがあるのならなんでもしたい、のです。少しでも兄が生きていてくれている事をこの目で見る日まで…」


驚く夫婦へなるべく弱々しく、そして敵意のない態度で示す。


リアン

「今一度教えていただけませんか。この世界の事を」











――――――――――――――✄


ラララ

「ハア〜〜……マズったナ…」


ある程度の情報を店長達から聞いた後一人部屋まで案内され結局今日も此処で宿泊する事になった。部屋の鍵を掛けたのを確認してベッドの上に腰掛け変身術を解けば変装リアンの姿から角が生えた商人ラララへと戻る。変身術は魔力を消費し続ける必要がある為魔力の少ない彼にとって時折休息を取らねばそう長くは持たないのだ。

シュシュを解けばサラサラとした髪が窓から入る風に揺れる。そうしてもう一度深いため息をついた。


エデン大陸。今回ラララが異世界から訪れた場所はコンケット地区・バイオ地区の二つに分かれた大陸であり、100年程前に起きたクリスタルの衝突事件以降能力者同士の争いや欠損者差別が絶えず起きているらしい。

ラララが今いる飲食店は南側バイオ地区の中央辺りである。高層ビルが立ち並ぶ巨大な街並みはエターナルシティと呼ばれているらしい。そんな街は北のコンケット地区とも近い場所にある為テロ組織達の動きも活発なようだ。


まずエデン大陸の話を聞いた感想としては


ラララ

(此処ドラゴンいねえのかヨ…!)


自身の環境とこの世界の環境の食い違い。今まで渡ってきた世界にはドラゴンといういわば神秘的な存在は実在していた為、今回のようなケースに違和感を感じなかったのである。自身の情報を過信し情報収集を多少怠った結果で完全なるやらかし。頭を抱える理由はあの警官にあった。


ラララ

(闇市場の連中からは麻薬の匂いが充満していタ。ああいう奴らに幻想的な話をしようが信じるか多少の頭イカれ野郎で済む話だガ現実主義の警官に聞かれたのはマズイ。商人にあるまじきミス…!)


少なくとも二度目の遭遇で感じたあの探るような静かな眼。こちらとは都合の悪い目だ。長居しなくて正解だったのは確かだが恐らく販売した飴の件で彼は捜索を続けている事だろう。次にあったら問い詰められるに違いない。…と思う。


ラララ

(この世界に来て間もないノニめんどうな事になった…ロルフッテサンの手がかりも掴めてないし、そもそもこの世界にいるかの判断をするにはまだ早すぎル。………それに)


能力者争いに欠損者差別。この話を聞かされた時、ラララは既にこの世界に足を取られたのだと悟った。




……




店長

『これがクリスタルのエネルギーに耐えきれなかった者の末裔だ。この痛みは君も知っているだろう?』


店長が片足のズボンを捲る。片足は義足だった。ラララは目を細める。


エレメント能力。地下にあるクリスタルのエネルギーに耐え能力が開花された者達。このエネルギーに耐える事が出来なかった者は肉体の一部を失い欠損者として差別の対象となるらしい。店長達の瞳からは強い怒りが見え、この世界の大まかなシステムを理解した。


店長

『私達欠損者は能力者の奴隷みたいなものだ。私や妻のように能力者のフリをしなければ生き残れない者達も沢山いる』


リアン

『店員の中には能力者もいるって先程お話していましたよね?…わたしは差別をされている感覚はありませんでしたし、むしろお優しかったですよ…?』


店員の妻

『此処に働きに来ている人達はみんな何かしら欠損者の苦しみを知っているのさ。子どもや愛する人が対象だったりね。だから私達のように支え合ってなんとか生きてる。知られたらどうなるか分かっているから…』


リアン

『……そう、だったんですね…』


店長

『皆が皆この社会に納得しているわけじゃない。だがなるべく能力者とは関わらないに越したことはないんだ。此処で働くからには君にも協力してほしい』




……



ラララ

(流石にあの状態で出ていくのは怪しまれるから出来なかったナ…)


こうして部屋に案内され今に至る。さらさらと夜風に当たりながらぼう…と考える。


ラララ

(この世界の奴隷システムもあらかた理解しタ。道理で臓器売買を提示する奴らと間違われるわけだ。あーヤダヤダ、あんな品物を雑に扱う低級ゴミ人間と一緒にされたくないですネ)

(……此処の人達はみんなお人好し。わたくしが闇市場に滞在していた事なんて一ミリも勘付いていない。連中の餌食になるのも時間の問題ダナ。此処はあまりにも”運が悪い”)


「巻き込まれる前に早いトコ移動しておきたいんですけド…」


そうして時刻を確認し一度シャワーを浴びてしまうかと考えていたその時。




”ド     ン”



ラララ

「!」


一階から巨大な爆発音が一面に響き渡り辺りが揺れる。次に聞こえたのはガラスの割れる音と女性の悲鳴、複数の声。


ラララ

(ホンっとにこの世界に来てからまともな事が無いナ…!)


恐らく一部の騒動が店の外で行われたのだろう。ラララは再び変身術を自身にかけリアンの姿へと変える。そして部屋の鍵を開け地割れが起き始めている2階から急いで階段を駆け下りた。


リアン

「店長、奥方様!」


店長

「来ては駄目だ!今すぐ外に脱出しなさい!」


二人はオープンキッチンの外側で瓦礫の山に囲まれた状態でいる。店長は足を負傷し起き上がれない妻を支えながら必死に突破口を探していた。

二人の姿をよく確認しようと目を凝らすが土煙が邪魔をする。店長が咳き込みながら続けて話す。


店長

「入口には騒動を起こした連中がいる!裏口は二階の外階段を使え!」


リアン

「ですが店長達は、」


店長の妻

「…!あ、アンタ!」




”ド     ン”



何度も引き起こされる爆発音に銃撃の音。建物が悲鳴を上げ、二人の真上にある天井が一部崩れ落ちる。店長は妻を両手で抱きしめ庇う。


リアン

(チぃッ…!)


舌打ちしたラララは咄嗟に風魔法を使用し二人を襲う瓦礫の山を吹き飛ばす。ガラガラと大きな音を立て清掃されていく様子に二人は顔を上げ唖然としている。


リアン

(…変身術を続けながらだと風魔法もこの程度カ)


店長

「――――お前、能力者だったのか」


風で乱れた髪を整えていると店長が絶望の目でラララを見る。


店長

「騙していたんだな?盗難も嘘か?そんな力があるなら襲われるはずがない」


リアン

「……」


店長の妻

「よ、よしなよ。私達は助けてもらったんだ」




”ド     ン”



「「「!」」」




店長

「くそっ…奴らはまだ暴れ回るつもりか…!?」


店長の妻

「あ、足音が近付いて来てるよ…奴らに見つかったら殺されるか連れて行かれちまう!私の足はもう駄目だ、アンタ達だけでも逃げておくれ…!」


店長

「馬鹿言うな!置いて行くわけ無いだろう!?」


リアン

「店長は奥方様を担いで出口に向かってください。わたしは時間を稼ぎます」


店長

「!ま、待て…!おまえ、」


店長の言葉を最後まで聞かずに一階の玄関まで走る。






――――――――――――✄


リアン

(言われるのは分かっていたはずなのに、馬鹿な真似をしたナ)


背中に投げかけられた言葉を受け流し一瞬瞳の底が揺らめいた。気の迷いだと目を瞑った頃には玄関の外まで辿り着いていた。

辺りは夜空に包まれている中炎の光がパチパチと建物達を燃やし続けている。夜に紛れ込み瓦礫の影に隠れて様子を伺えば銃撃や剣術の撃ち合いを繰り広げている連中が見えた。


リアン

(さて。どう時間を稼ぐか…………ン…?)


ふと見覚えのある格好をした人物が視界に入り僅かに目を見開く。あの警官は。





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