レオララ/約束と再会
- reisetu
- 1月6日
- 読了時間: 4分
更新日:3月9日
レオララクリスマス
作者:ろころころさん
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穏やかな日差し。
暖かな風。
それらに導かれるように、穏やかに目を覚ます。
(此処は…?)
レオンは辺りを見渡す。確か自分は…そうだ、恋人や友人と聖なる夜を祝い、酒とご馳走を楽しみ、そしていつもの如く酒に呑まれ………そこからの意識は途切れているが、まぁ許容範囲だ。
それならばこれも、アルコールによる幻覚か?
そう思うが、あまりにもハッキリとした意識にレオンは疑わざるを得なかった。
──────そして、目の前の光景にも。
「〜♪」
少年が、幸せを示す小さくふわふわとした草花を、鼻歌混じりにかき分け何かを探していた。
(──────あれは)
知っている。レオンは少年を、知っている。
柔らかに揺れる髪、片方が痛々しく折れていても立派な山羊のような角。
知っている。
あれは、彼の愛する人だ。
ふと、少年は弾かれるように顔を上げる。
そして屈託のない笑顔を浮かべると、手に小さな緑を握って駆けだした。
「ラララさん!見つかりましたか?」
(この声は……)
レオンの身体が強ばる。
そこに現れたのは、木漏れ日をキラキラと反射する銀色の髪、そしてサファイアのような空色の瞳。
──────間違いない。幼少期のレオンだ。
「ひとつだけですが、見つけましたヨ」
「それはそれは。あ、知ってますか?四葉のクローバーってひとつ見つけたら近くに生えている可能性が高いんですって。株により、四葉の出来やすさが違うらしいんです!」
ふふん!と言わんばかりに知識をひっけらかす幼い自分を、レオンは顔を顰めながら眺める。
(あーあ…能ある鷹は爪を隠すと言うでしょうに、何を情けないことを…)
子供に対してそんな感想を抱く方もそれなりに大人気ないかもしれないが、所詮、子供といえ自分だ。容赦も情けも無い。
しかし、幼い恋人は純粋な笑みを浮かべてぱちぱちと拍手を送った。
「そうなんですカ?レオンサンは物知りですネ!」
「そうですか?そうかもしれません…ふふふ…」
レオンは更に顔を顰める。なんだこれ、拷問か?めでたい聖なる夜になんてもん見せてくれるんだ。しかも幼い恋人も、そんなに単純に褒め称えないで欲しい。そんなことするから調子に乗るのだ。
レオンが大人気なしにそんなこと考えているあいだにも、少年二人は作業を進める。
四葉のクローバーを集めて、何やら編んでいるようだ。あれはおそらく──────冠?
「ラララさんは、四葉のクローバーを集めてどうするんですか?」
「…大切な人にあげマス。よつばのクローバーはこーうんが訪れる…と。その人には、ずっと幸せでいて欲しいのです」
「おや、同じですね。私もですよ」
(大切な人、か──────)
今のレオンには、大切な人がいる。
幼く無力な自分を受け入れ育て、評価までしてくれたユニオンの上司と同僚や後輩。
方向性の違いがあれどわかろうと試み、同じく平和を望む人間として認めてくれた救助隊の仲間達。
そして──────
(ラララさん、これを望んだのは貴方ですか?)
互いに己を押し殺し、生きることに必死だった幼少期。
大切なものなんてなかった。守るべきものもなかった。だからレオンはエージェントとして、そして彼は商人として、何かを装って生きた。
そうでもしなければ、明日を迎える意味すらも思いつかなかったからだ。
きっと幼少期からこうして手を取り合うことが出来ていれば、何か変わったのかもしれない。
勿論、これが結果論であることも、夢であることもわかっている。
だとしても──────
(聖夜くらい、夢を見させてくれても良いじゃないですか)
きっと貴方もそう思うのでしょう?
存在しない、けれども暖かくて穏やかな記憶。
これが決して夢幻でも──────今のレオンには生きる意味がある。
彼らの四葉のクローバーが、今すぐに幸せを運んでくることがなかったとしても。
レオンはその先の未来を知っている。
その冠は、互いを幸せにすると誓った契約。
そして、再会の約束であった。
Fin.
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四葉のクローバーの花言葉 『約束』
イエス・キリスト由来のものらしい。クリスマスはキリストの誕生を祝うお祭りなので、たまにはそういうのもいいよねって話。
というか四葉のクローバーの花言葉って多すぎませんか???