レオララ+デストロ
- reisetu
- 1月6日
- 読了時間: 8分
更新日:3月9日
世界を救って平和になった時空のレオララ(同居済)…の家にデストロが住み着くようになるまでの話。レオララ二次創作です…
作者:ろころころさん
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世界の始まりとは何か。
ビッグバンにより生まれた、神が七日間で創造した────理由や生まれは様々だが、何らかの理由があって世界が生まれたとされるのは変わりない。
それでは、世界が生まれる前の"世界"は?
ただの白紙、真っ白で何も無い未知でありながら誰でも知っている場所。何せ東西南北、上下前後全てが真っ白で、何も無く、そもそも"白"ですら正しく認識できているかもわからない世界。
否、何も存在しない空間など世界と呼べるのか?
そんな空間に、青年がひとり。
いなくなってしまったあの人を探して、ふらふらと、彷徨っていた。否、彷徨うはずは無かった。何せ元々何も無いのだから、迷うことも無いはずなのに─────その青年はあたかも"探し物が必ず何処かにいる"と信じているかのように…彷徨っていた。
────、置いてかないって、言ったじゃないですか
彼は嘆く。存在せぬ記憶に。
そうして、只々広がる白紙の向こうへ、手を伸ばした─────
…………………………………………………………
………………………………………
…………サン…………
レ……サン…
………………レオンサン!」
「へっ!?な、なんですか敵襲ですか!?」
予期せぬ振動に驚いた青年、レオンは反射的に上半身を起こした。そして自分の下に柔らかさと暖かさを感じ、その正体を確かめる。
「……………えっ?貴方、私の下で何してるんですか?夜這いですか?…へっ、変態!」
「んなわけねえダロ!酒如きでベロンベロンになりやがった貴方が勝手にのしかかって来たんでしょうガ!」
「え?そうでしたっけ?というか私、酒なんて飲んだ記憶ないんですけど……あ、あれじゃないです?」
長らくのしかかられていたのに加え、怒鳴った反動で息を切らしながら、ボサボサになった美しい髪を整える青年にレオンはぐいっ…と攻め寄った。
「実は、昨晩貴方と飲んでいた私は"デストロイヤー"だった…」
「その辺のホラーよりホラーな展開、やめていただけマス?というか!アレは普通に貴方ですから潔く認めなサイ!」
飲みすぎで記憶が飛んでるだけデスと言われる。レオンが飲みすぎで失態を犯すのは今に始まったことでは無いので仕方ない、潔く認めることにした。
「まぁそうですよね。あの変な夢も酒のせいだと思えば納得出来ますし。……貴方は私の事置いて行くだなんて、そんな馬鹿なことしませんもんね」
「ン?何か仰いまシタ?」
「いえ、なんでも」
レオンは青年の問に首を振る。
ふと、端末の時計を見ると示す数は…
「ってヤバいですよ!そろそろ出ないと間に合わないんですけど!?なんで起こしてくれなかったんですか!」
「わたくしを敷布団にスヤスヤ眠りコケやがっていた貴方の自業自得ですネ。ザマァ見やがレ
!」
「こ、このぼったくり商人!…あとで覚えておきなさい!」
レオンは捨て台詞を一つ吐くと、そのまま隊服を引っ掴んで洗面所へと駆けて行った。
「…………………」
一人になったリビングルームで青年…商人の男は閉められた廊下へ続く扉を鋭い瞳で眺めていた。
(また何か、見たんでしょうネェ…)
彼は恋人の動揺を感じ取っていたが、敢えて口にすることも尋ねることもしなかった。尋ねる、というのは終わったことを掘り返すのと同じだ。彼自身もよくわかっているのだ。
「マ、暫くは様子見、でしょうネ」
商人の男は扉の奥の慌ただしい音をBGMに、自身も身支度を始めた。
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「それでは私は先に出るので。何かあったら連絡してくださいね?例えば商品の薬品を零して身体が小さくなったとか、ユニオン警察に目をつけられたとか…」
「ハイハイわかりましたカラ!貴方は早く行きなサイ!既に遅刻ギリギリなのおわかりデ!?」
「わ、わかってますよ!とりあえず何かあってもなくても連絡してくださいね!?では!」
そう言い残して、レオンは全力疾走する。
寝起きの身体は訛っているが、腐っても警官であり救助隊員。それくらいで転ぶほどヤワじゃ…
「……っ!?」
急に膝から力が抜け、ガクッと身体が地面に引き付けられるように沈む。
身体が地面にぶつかる──────そう構えたその時、
「相変わらず腑抜けているようで、安心しました」
聞き慣れたというにはあまりにも違和感を感じる声、そして腰に回される腕。
地面に倒れ込む前に、レオンは何者かに支えられた。
この匂いを、声を、彼はよく知っている。
「──────何故……なんで、いるんですか?」
警戒、疑念、恐怖──────レオンが抱いた感情は、少なくとも"彼"を歓迎するようかものでは無かった。彼を良しとしないものであった。
「何故?簡単な話、世界を行き来するくらい私にとっては造作も無いものです」
男は嗤った。全く自分と同じ顔であった。
「違います。貴方は此処での役目を終えたはず。それなのに何故、わざわざご丁寧に顔を出しに来るのかって聞いてるんですよ」
「おや、そんなことですか。役目も何も…役目を終えた世界に行くな、だなんて命を私は受けておりませんので」
「違います!何をしに来たのかって聞いてるんです!用事のない世界なんかに来る必要無いでしょう!?」
「…………………」
男は黙った。先程の笑顔とは異なり、なんの感情も読み取れない"無"の顔。
ふと、レオンはもうひとつの気配を視界の向こうへ感じる。
「貴方が其れを知る必要はありません。……それでは」
「えっ、あっちょっと待ちなさい!」
レオンはこの後の展開を何となく察して、踵を返す男を呼び止める。
「─────神の御加護があらんこと……」
ガコン
「………っだぁ゙っ!?」
男は、倒れ込んだ。レオンは先ほど地面へ倒れること無かったのに。
「あーあ、だから言ったんですよ…」
レオンは溜息を吐いた。
「なんだ?わざわざ此奴に忠告してやろうとは良い心掛けじゃないか。死ぬか?」
「死にませんよ!だ、だって外見が私そっくりなんですもん!今だって頭がゾワッてしましたよ…」
中身は違うとはいえ身体は仲間なのだ、もうちょっと容赦をしてくれたって良いだろうに…とレオンは相変わらず仏頂面で棺桶を軽々と持ち上げる友人に恨みがましい視線を送った。
「え、これどうするんですか?」
「?埋めるが」
「埋めっ……!?」
え、埋葬?いや、恐らく先程の様子だと生きているだろう。そうなれば生き埋めか。
……どちらにせよ、此奴に引き渡せば彼の命は無い…いや、実際に彼を生き物と例えて良いのかわからないが……
「………………私が預かります」
「ん?拷問か?解剖が?」
「そんなことしま………そ、そうですね。拷問して解剖します」
「……………………」
友人は、深緑の瞳でじっと此方を見つめる。レオンは人と目を合わせるのが好きではない。だってこんなの、尋問じゃないか。特に、彼相手の場合は。嗚呼、明らかに怪しまれている…………そう思って身構えたが、帰ってきたのは意外な答え。
「………はぁ、仕方ないな。好きにしろ。俺はもう行くんだぞ。副隊長の小言は実に解せないからな」
「え、よ、良いんですか…?」
「別に。まさかキミが"それ"に愛着が湧いているとは想定外だったが…人とはそういうものなのだろう?」
「あ、愛着なんでしょうかこれ…」
「そうだろう。そいつがもう一度此処に来た理由と同じだろうな。気持ち悪いな」
「しれっと酷くないですか!?」
別に彼のことが好きなわけじゃない。ただ、自分とそっくりの外見というのもあるし、まぁあとは何となく"彼が再びこの世界にやってきた理由"をレオンも理解したから。
きっとレオンが彼に対して抱いている感情と同じ。別に好きな訳じゃない。けれども、無くなってしまったらなんだか物足りない。あるのが当たり前で、無いのは日常じゃない、そんな存在。
「それでこそ、平和な日常、でしょうか」
あの白紙の世界で、レオンが求めていたのは恋人の存在、そして彼との平和で温かな生活。
世界を救い、日常が戻り、彼と暮らすようになってから。
レオンは始めて、この世界を愛した。
だから嬉しいのかもしれない。滅びを司る彼が、この世界を少しでも他の世界より愛してくれているのなら。
彼と自分が共に救った世界が、より特別って思えるじゃないですか。
「じゃあお言葉に甘えて回収していきますので」
「そうか。…何時でも俺は殺れるということを忘れないで欲しいぞ」
「…ちょっ!貴方は逐一言い回しが物騒なんですよ!」
仕方ないので男を背負う。自分と同じ重さの、更に力の抜けた人間を運ぶのは骨が折れるが仕方ない。
「ふむ?そのまま車が突っ込んでくれば」
「ぶ、物騒!」
「冗談だぞ。半分はな」
マントの下で静かな笑みを浮かべる友人に異論を唱えながら、レオンは元来た道を歩き始めた。
*************
「ってことで、戻ってきました?」
「ハァ?」
商人の反応は、恐らく正しいものである。
市場への出店のための準備を行っていた彼は、帰ってきた恋人に忘れ物かと小言を言ってやろう…と思っていたのだが、その光景を目にして絶句した。
「イヤイヤイヤ、何ですその特級呪物ハ!?捨ててきなサイ!」
「ま、待ってください!ここまで運ぶの結構大変だったんですよ!捨てるならあの場所で捨ててきたって変わらないじゃないですか!」
「そもそも何故持って帰ってきやがったんですカ!貴方、わたくしがソレに何されたカ…しくしく…」
「え?えぇっ!?えっちょっ、何されたんですか!?ねぇちょっと起きなさいよこの破壊クソ野郎!私のラララさんに何したんですか!?洗いざらい吐かせてやりますから!!!起きなさいって!!!」
レオンは自分とそっくりな男の体をぐわんぐわん揺らす。
男が目覚め、全くよくわからない状況に悲鳴をあげるまで、あと残り────
Fin.