本編FIRST/レオララ➆遭遇編
- reisetu
- 1月2日
- 読了時間: 7分
更新日:3 時間前
リアン
「え…は、はい!お会いするのは初めてです。…ええと…?」
カイン
「あ、こちらはユニオンの上司クローヴィス先輩です。お隣は救助隊の方ですね」
リアン
「…リアンと申します。よろしくお願いします」
一礼
カイン
「そういえばクローヴィス先輩や救助隊を知らないなんて珍しいですね?先輩達の知名度はまだまだって事ですかねえ……ハッ!なっなんでもないです!!」
リアン
「ふふ。初対面ではありますが救助隊や警察のお話は僅かながら聞いていましたよ。……それと、私は一応男なのですが…」
カイン
「え”っ!?そ、それは大変失礼しました!?あまりにも美人さんだったので…」
リアン
(そんなに女性に見えまス…??背を通常より低めに設定したから?まあ対応が優しくなって都合良いですけどモ…)
(それよりも一刻も早く此処から立ち去りたイ…変身術維持するのも疲れてきたし何より警察も隣の救助隊の視線も居心地悪い。二人ともわたくしにとって都合が悪い人物なのは分かる…長居したら不利ダ)
レオン
「男性…?………ああいえ、これは失礼しました!とても綺麗な身なりをされていたので……ってカイン、聞こえてますよ。まぁ良いですけどね…他の隊員の前では言わないでくださいね…地雷ワードなので…」
ウェン
「…?…経験談か?」
カイン
「先輩って割とノンデリですからね…」
レオン
「お黙らっしゃい。…ゴホン。
リアンさんはご予約されたお部屋へ向かう予定でしたよね?良ければ途中まで一緒に行きませんか?お荷物、お持ちしますよ」
リアン
「お気遣いありがとうございます。ですが荷物は一つですし大丈夫ですよ。……その、救助隊…さん?そんなに見つめられるのは恥ずかしいのですが…」
ピピ
カイン
「あ、ちょっと待ってください!連絡が…」
………
カイン
「ーーーリアンさん!先ほど運ばれた女性の方は無事治療が終えたそうですよ。他の方々も無事です」
リアン
「ああ、良かったです…!近くの病院に?」
カイン
「はい。確認と後始末の為に私は今から救護班と合流してきます。先輩これ、リアンさんの部屋番号の鍵です。すみませんがよろしくお願いします!」
リアン
「え、あの、私も一緒に行ったほうが…」
カイン
「明日には退院されるそうですし今日はゆっくり休まれてください。あ!そうだ先輩報告書にも記載しますが今日襲撃された場所の近くで土砂崩れがありまして、その土砂崩れごと移動して道が出来るという奇妙な体験をしました。テロ組織の新たな能力かもしれませんし一応ご報告です。詳細は後日に!では失礼しますー!」
バタバタバタ…
リアン
「………行ってしまいましたね…」
(あああ何でよりにもよってこのタイミング…!?さ、最悪ダ)
レオン
「ええ、言うこと言って去って行きましたねまったくもう………ええと、リアンさん?番号は把握しましたので、鍵はお渡ししておきます。何かあったら困るので」
ラララくんにルームキーを手渡す。
レオン
「─────さて、エレベーターを待ちましょうか。…そういえば先程カインが言っていた、土砂が動く話ですが…どう思います?」
ウェン
「知らない」
レオン
「少しは頭使いなさい棺桶馬鹿。…少し前に、闇市でとある商人に会いまして。彼が荷物を運ぶ際に"物体を浮遊させ操作する"能力らしきものを使用していたんです。リアンさんはそのような力を持つ人物をご存知ありませんか?」
リアン
「ありがとうございます」
ルームキーを受け取る。
リアン
「いえ…わたしにも分かりません。ここまでお世話になっているのにも関わらずお役に立てずすみません…」
(棺桶馬鹿…?まあ確かに棺桶背負ってるみたいですけド…見れば見るほど変な人達だナ)
首を小さく横に振り申し訳無さそうな表情で返答しているとエレベーターの音が鳴る。
リアン
「あ…乗りましょうか」
レオン
「はい。お先にどうぞ」
ボタンを押したまま、レオンはラララくんを先に通す。そして二人もエレベーターへ乗り込んだ。
レオン
「…そうですよね。いえ、お気になさらず。そういえば1つご協力いただきたいことがありまして。質問ばかりで申し訳ないのですが…テロが起きた際、貴方は何処にいらしたのですか?ユニオンも救助隊も出動して大変お恥ずかしい話、今回は建物も大分破壊されまして。死傷者も多く出ています。
…テロの主犯が目に見えているとはいえ、私達は事件の詳細を解明せねばならないのです。どうかご協力を」
二人へ軽く頭を下げエレベーターに乗る。
リアン
「…近くの飲食店にいました。バイトを終えて店長達と一息ついている間に外から爆撃がありまして…一部撃ち合いもしていたようです。建物も一部崩れて店長の奥方様が巻き込まれました。先程無事だと連絡が入ったようで安心しましたが…他にも怪我人は沢山いました」
エレベーターの端まで寄り外の景色に視線を向け煌びやかなビルの光達に静かに目を細める。

リアン
「こんなにも景色は綺麗なのに、今日あそこで死傷者が沢山出たんですね。………。まだ、信じられません」
レオン
「……なるほど、飲食店のバイトさんでしたか。爆発による建物の倒壊、撃ち合いの音……わかりました。ありがとうございます。…そうですね、早く平和に──────」
ウェン
「テロの多発は今に始まったことでは無い。そう、驚くことでも無いはずだが、もしや異国み…」
ボカッ!
ウェン
「いっ…!…………おい、何をする」
レオン
「本っ当に口を開けば余計なことしか言いませんね貴方は!?……ああ、すみませんリアンさんこの馬鹿が。
────ええ、確かにここからの夜景は美しい。しかし、光あるところに影あり。これらの光によって生まれた影には暴力、虐待、そして戦争が潜んでいるのです。どうか、貴方もお気をつけください。影に潜まれてしまっては、私達も探しには行けませんから」
リアン
「ふふ、仲がよろしいのですね」
二人のやり取りにニコリと笑いかけ再度夜景を見ながら答える。
リアン
「救助隊さんはお強いです。けれど一般の方々はそう慣れないものですよ。分かっていても目の前の現実を受け入れたくない人達もいる。…恐怖と驚きはまた別の感情ですから」
「…はい。お気遣い感謝いたします。……警察さん方もお休みになられるのでしょう?一日中仕事のお話をされていたらお体に毒だと、思いますよ。助けていただいたわたしが言うのも…なんですが」
チン、とエレベーターが目的の階に到着しラララはレオンくんへ向き直る。少しふらつきそうになるのを耐える。
リアン
(ほ、ほぼ1日中魔力使用し続けてるからそろそろ変身術を維持するのキツイな…!魔力切れ起こす前に撤退したいところですケド……。まあ見送りもここまでだろうしなんとか、)
ウェン
「…………そうか?お前は受け入れてるように────…むぐっ」
レオン
「貴方のような人間が人の感情を語ろうなど烏滸がましいんですよ、身を弁えなさい。…………ええと、リアンさん。お気遣いありがとうございます。そうですね、貴方をお送りしたら私達も休みますよ。貴方もどうか、心と身体を休ませられますよう」
指定の階層に到着したエレベーターは、軽やかなチャイムを鳴らし重たい扉を開く。内蔵のボタンを押して、レオンは青年に先に出るよう促した。
リアン
「はい。こちらこそありがとうございま―――――」
ぺこりとお辞儀をした後に足元がふらつきレオンくんの肩に一瞬だけもたれかかる。
リアン
(ヤバ)
「っ!す、すみません!安心したら急に力が抜けたみたいで。お先に失礼しますね。おやすみなさい」
そう言ってそそくさと先に出て一度も振り返らず真っ直ぐ指定された自室へと向かっていった。
レオン
「……えっ?あ、ちょっと!」
レオンは青年の足元がもつれたこと、そして肩に軽くぶつかったことにも気づくが……その時には、当の青年はそそくさと自室への道を辿り、気づけば呼び止めるには遠いくらいの距離が出来ていた。
レオン
「…………行ってしまいましたね。ふらついてるようにも見えましたが、大丈夫でしょうか?」
それに…肩に触れた時に嗅いだ香水の匂いを、レオンは何処かで嗅いだことがあった。
レオン
「ええ…知ってるんですよ、あの匂い」
ウェン
「?……ち、近寄らないでほしいぞ」
レオン
「黙りなさいこの人外」
ルームキーを人外の顔面目掛けて投げると─────彼が少し気がかりだったが、自身も部屋へ向かうことにした。